窃盜罪は他人の所持を侵害する行爲であるから、その目的物の所有者と所持者とが異る場合において其物の所有者を判決の理由に判示する必要はない。
窃盜罪における目的物の所有者を判決の事實摘示に判示することの要否
刑法235條,舊刑訴法360條1項
判旨
窃盗罪は他人の占有を侵害する罪であるため、判示において目的物の所有者を特定する必要はなく、また自白の補強証拠は必ずしも犯人が被告人であることを直接証明するものである必要はない。
問題の所在(論点)
1. 窃盗罪の認定において、目的物の所有者を特定して判示する必要があるか。2. 自白の補強証拠は、被告人が犯人であることを直接証明する内容でなければならないか。
規範
1. 窃盗罪(刑法235条)の構成要件において、本罪は「他人の占有」を侵害する行為であるため、客体が他人の占有に属するものであることが確定できれば足り、所有者の特定は不要である。2. 自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、必ずしも犯人が被告人であることを明らかにするものである必要はなく、自白の真実性を担保するに足りる客観的証拠であれば足りる。
重要事実
被告人が窃盗罪に問われた事案において、原審は被告人の自白に加えて、被害者Aが提出した窃盗被害届書を証拠として挙示し、有罪判決を下した。これに対し、被告人側は、①所有者を判示していない点、および②補強証拠が被告人と犯人の同一性を示していない点を理由に上告した。
あてはめ
1. 窃盗罪の本質は他人の所持(占有)の侵害にある。本件において、目的物の所持者と所有者が異なる場合であっても、侵害された「他人の所持」が特定されている以上、その背後にある所有者を重ねて判示する必要はない。2. 証拠関係をみると、原審は自白のみならず被害届書を証拠として採用している。被害届書は窃盗被害の客観的事実を示すものであり、補強証拠としての適格性を有する。補強証拠は犯罪事実の客観的部分を裏付ければ足り、犯人との結びつきまでを直接証する必要はない。
結論
窃盗罪の成立に所有者の特定は不要であり、被害届書を補強証拠として事実認定を行った原判決に憲法違反や法令違反はない。
実務上の射程
窃盗罪の客体について「他人の財物」の解釈を占有重視で捉える実務を裏付ける。また、補強証拠の範囲については、実質説(自白の真実性を担保すれば足り、犯人との結びつきは不要)の立場を採る重要判例として、証拠法の論点(刑訴法319条2項)で引用すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)1912 / 裁判年月日: 昭和24年11月15日 / 結論: 棄却
論旨第一點は、原判決には、裁判長のなすべき證據調手續を省略した違法があるというのである。しかし公判調書によれば、原審裁判長は判決に證據として舉げてある相被告人Aに對する司法警察官尋問調書、および同B檢察事務官聽取書(右「檢察事務官」は「副檢事」の誤記と認められる)のほか、被告人Cに對する司法警察官尋問調書を讀み聞け意見…