原判決によると被告人はA等と共謀の上進行中の貨物列車内から玄米や、砂糖を窃取したというのであるからそれらの物品が被告人以外の者の所有保管に屬するものであることは明瞭であり罪となるべき事實の判示としては右で充分であつて所有者又は保管者が何人であるかを特定することは必ずしも必要としないのである。それゆえ原判決には所論の如き理由不備の違法があるとはいえない。
窃盜罪における被害物件の所有者を判示する事の要否
刑法235條,刑訴法360條1項,刑訴法410條19號
判旨
窃盗罪の成立を認めるに際し、盗品が被告人以外の者の所有・保管に属することが判示されれば足り、所有者または保管者が誰であるかを具体的に特定する必要はない。
問題の所在(論点)
窃盗罪の成立を認めるための判示において、盗品の所有者や保管者を具体的に特定する必要があるか。
規範
窃盗罪の構成要件要素である「他人の財産」の該当性は、当該物品が被告人以外の者の所有または保管に属することが客観的に明らかであれば認められる。したがって、罪となるべき事実の判示においては、所有者または保管者が何人であるかを具体的に特定することは必ずしも必要ではない。
重要事実
被告人は、共犯者らと共謀の上、運行中の貨物列車内から玄米や砂糖を窃取した。原判決は、これらの物品が被告人以外の者の所有・保管に属することは明示したものの、その具体的な所有者または保管者の氏名等については特定していなかった。これに対し、弁護側は理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人らは、進行中の貨物列車内から玄米や砂糖を窃取している。この事実関係に照らせば、それらの物品が被告人ら以外の者の所有・保管に属することは客観的に明瞭である。窃盗罪は、他人の占有する財産を奪うことで成立する罪であり、犯人との対比において「他人の物」であることが確定できれば足りる。したがって、具体的な所有者等の氏名が不明であっても、他人の物であることの判示として充分である。
結論
窃盗罪の判示において所有者等の特定は不要である。したがって、原判決に理由不備の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
訴因の特定(刑訴法256条3項)や罪となるべき事実の判示において、窃盗罪の客体である「他人の財産」をどう記述すべきかの指針となる。実務上、遺失物等で所有者が直ちに判明しない場合でも、状況から他人の占有・所有が明らかならば「氏名不詳者所有」等の記載で足りることを正当化する根拠として用いられる。
事件番号: 昭和24(れ)1220 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
窃盜罪は他人の所持を侵害する行爲であるから、その目的物の所有者と所持者とが異る場合において其物の所有者を判決の理由に判示する必要はない。