所論の領收書は刑事訴訟法第三四二條に規定する證據物又は證據書類とは認め難いばかりでなく、これを取調べなかつたことについて訴訟關係人から異議があつたことは記録上認められないのであるから、原審が公判において右の領收書について證據調べをしなかつたとて刑事訴訟法第四一〇條第一三號の場合に當るものではない。
刑訴法第三四二條に該當しない書類を取調べなかつたことと上告理由
刑訴法342條,刑訴法410條13號
判旨
判決書における証拠の引用方法が、被告人の供述のうち一部に否認や無関係な事実が含まれる場合であっても、自認した部分を特定して引用した趣旨と解される限り、理由不備等の違法はない。また、証拠物等に該当しない書面について証拠調べを行わなかったとしても、直ちに審理不尽の違法とはならない。
問題の所在(論点)
被告人の公判供述の一部に犯罪事実と無関係な内容や不明確な部分が含まれる場合、判決が「判示同旨の供述」として一括して引用することに証拠選択上の違法(理由不備・理由齟齬)があるか。また、特定の書面の取調べを行わないことが審理不尽に該当するか。
規範
裁判所が判決において被告人の公判供述を証拠として引用する際、その供述に自白部分と否認(あるいは無関係な事実の肯定)部分が混在していても、全体として被告人が犯罪事実を自認した部分を措信し、その範囲で引用したと解されるならば、証拠の取捨選択は裁判所の合理的な自由裁量の範囲内にある。
重要事実
被告人は窃盗罪に問われ、原審(控訴審)は第一審判決が摘示した犯罪事実を認める証拠として、被告人の原審公判廷における「判示同旨の供述」を引用した。しかし、被告人の原審供述の中には、自己の犯罪事実を認める部分だけでなく、共犯者単独の犯行(被告人には無関係な事実)を間違い公判等で認めた部分や、必ずしも全部を認めたわけではない部分が含まれていた。弁護人は、自己の所為でない事実を認めた供述を証拠とした点や、関係のない領収書の取調べを行わなかった点に理由不備等の違法があるとして上告した。
あてはめ
被告人が無関係な第三者の窃盗事実を認めた点は、単にその事実が間違いではないと述べたに過ぎず、自己の犯罪事実に関する供述の証拠力を失わせるものではない。判決が「判示同旨の供述」と単純に表示したのは粗雑ではあるが、その趣旨は自認部分を措信して引用したものと解されるため、理由の齟齬はない。さらに、問題となった領収書は証拠物等としての適格を欠き、当事者からも異議がなかった以上、これを取り調べなかったことに審理不尽の違法も認められない。
結論
原判決に証拠引用上の違法や審理不尽の違法は認められず、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所による証拠の引用方法が多少簡略(「判示同旨」等)であっても、記録全体から自白部分を特定して採用したと合理的に解釈できる限り、判決の適法性は維持される。実務上、公判供述の一部に否認が含まれる場合の証拠適格や、証拠調べの必要性の判断における裁判所の裁量権の幅を示す事例として機能する。
事件番号: 昭和23(れ)396 / 裁判年月日: 昭和23年11月5日 / 結論: 棄却
一 數個の行爲が繼續の意思に出でたものであることが、證據にょつて認められた犯罪行爲の性質、態樣等から自ら推知される場合には、犯意繼續の點について、特に之を證據にょつて認めた理由を説明する必要がないものと解すべきである。 二 所論被害辨償に關する受領書は、證據書類として裁判所に提出せらるる場合と、證據方法としてでなく參考…