判旨
没収の事由は「罪となるべき事実」ではないため、判決において証拠による理由説明は不要であり、また刑訴法392条2項の職権調査は義務ではなく任意である。
問題の所在(論点)
1. 没収の事由は、判決書において証拠に基づき理由を付すべき「罪となるべき事実」に含まれるか。 2. 控訴裁判所は、控訴趣意書に記載のない事項についてまで職権で調査する義務を負うか(刑訴法392条2項の性質)。
規範
1. 没収の事由は、刑訴法335条1項にいう「罪となるべき事実」には当たらない。したがって、判決において証拠によってこれを認めた理由を説明することは不要である。 2. 刑訴法392条2項は、控訴裁判所が控訴趣意に含まれない事項について調査できる旨を定めた任意的職権調査の規定であり、裁判所に調査の義務を課すものではない。
重要事実
被告人が刑事事件において有罪判決を受け、その際に特定の物件について刑法19条に基づく没収が言い渡された。被告人側は、第一審判決において没収の事由が証拠によって十分に説明されていない(理由不備)点、および控訴審が控訴趣意に含まれない事項について職権で調査しなかった点には違法があるとして上告した。
あてはめ
1. 没収は刑罰に付随する処分であって犯罪構成要件そのものではないから、没収の事由は「罪となるべき事実」には当たらない。本件第一審判決は刑法19条を適用しており、挙示された証拠から本件犯行の供用物件であること等も明らかであるため、理由不備の違法はない。 2. 刑訴法392条2項の規定は、控訴裁判所の裁量による「任意的」な職権調査を認めたものである。したがって、原審(控訴審)が控訴趣意に包含されない事項について調査を行わなかったとしても、直ちに違法とはならない。
結論
本件没収の言い渡しに理由不備の違法はなく、また控訴審が控訴趣意外の事項を職権調査しなかったことも適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、没収要件の認定に関する判決書の記載程度を示す規範として重要である。答案上は、刑訴法335条1項の「罪となるべき事実」の範囲を限定する文脈や、事後審制の下での控訴審の職権調査権限の限界(義務ではなく裁量である点)を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)652 / 裁判年月日: 昭和25年9月14日 / 結論: 棄却
住居侵入窃盗を犯した被告人が住居侵入(但し、原判示中にない)にあたつて使用した物は、窃盗の手段としてその用に供した物と解することができる。