論旨は、本件記録添附の控訴趣意書を援用するというのであるが、上告趣意書自体にその趣意内容を示さず記録中の他の書面を援用するに過ぎないものは適法な上告趣意といえない(昭和二五年(あ)一二二〇号同年一〇月一二日当裁判所第一小法廷決定参照)。
控訴趣意書を援用すると記載した上告趣意書の適否
刑訴法407条,刑訴規則240条
判旨
刑事訴訟法392条2項は、控訴裁判所に対して職権調査の権限を付与したものであり、調査義務までを課したものではない。また、前科は「罪となるべき事実」ではないため、判決書において必ずしも証拠による理由を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 控訴裁判所は、刑訴法392条2項に基づき、控訴趣意に含まれない事項についても職権で調査すべき義務を負うか。2. 前科の認定において、判決書に証拠による理由を示す必要があるか。
規範
1. 刑事訴訟法392条2項は、控訴裁判所において同項に掲げる事由につき職権で調査することができることを示したに止まり、調査義務を負担させるものではない。2. 前科は、刑法上の構成要件に該当する「罪となるべき事実」そのものではないため、必ずしも証拠により認定した理由を示す必要はなく、記録上の適当な資料により認定することも許容される。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審判決において証拠の摘示が不明瞭である(刑訴法378条4号該当)こと、および前科の認定等について不備があることを理由に上告した。しかし、これらの事由は控訴審において控訴趣意として主張されておらず、原審(控訴審)はこれらを職権で調査し第一審判決を破棄することはしなかった。
あてはめ
1. 刑訴法392条2項の規定は、控訴裁判所に職権調査の「権限」を認めたものであって「義務」を課したものではない。したがって、被告人側が控訴審で主張しなかった事項について、原審が職権で調査・判断しなかったとしても、法的な調査義務違反や憲法違反の違法は認められない。2. 前科については、事実認定の対象ではあるものの「罪となるべき事実」には当たらない。そのため、厳格な証拠調べや理由の摘示が必須ではなく、記録上の資料に基づき認定したとしても違法ではない。
結論
本件上告を棄却する。控訴裁判所に職権調査義務はなく、前科認定の手続きにも違法は認められない。
実務上の射程
控訴審の職権調査の性質が「義務」ではなく「裁量的な権限」であることを明示した点に意義がある。答案上、控訴審の審判範囲や職権破棄の可否が問われる場面で、裁判所の判断の不作為を論じる際の根拠として活用できる。また、前科の認定が「罪となるべき事実」の認定とは区別される点も重要である。
事件番号: 昭和26(あ)1671 / 裁判年月日: 昭和27年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法392条2項は、控訴審における裁判所の職権調査義務を一般的に定めたものではない。また、控訴審で主張・判断されていない事項を上告理由とすることは、判例違反を主張する場合であっても適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は犯罪事実を認定した第一審判決に対し、控訴審が職権調査義…