判旨
控訴審は事後審としての性質を有するため、事実の取調べは第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限られ、その必要性の有無は原則として裁判所の裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
控訴審における事実の取調べの範囲とその裁量(刑訴法393条1項)。
規範
現行刑訴法における控訴審は、第一審判決の当否を事後的に審査する「事後審」としての性格を有する。したがって、事実の取調べは、第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限定される。その取調べの必要性の有無は、刑訴法393条1項但書の場合を除き、裁判所の広範な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人が、原審(控訴審)において事実の取調べが行われなかったことを訴訟法違反として上告した事案。弁護人は量刑不当や訴訟法違反を主張したが、控訴審が独自に事実の取調べを行わずに第一審判決を維持したことの適否が争点となった。
あてはめ
本件は刑訴法393条1項但書(義務的取調べ事由)に該当する事態ではないことが記録上明らかである。原審が独自の事実取調べを実施しなかったことは、事後審としての控訴審の性質に照らし、第一審判決の当否を判断する上で特段の必要がないと判断したものと認められる。この裁量判断は経験則に反するものではなく、適法な手続であるといえる。
結論
控訴審における事実取調べの要否は裁判所の裁量に属し、本件で取調べを行わなかった原審の訴訟手続に違法はない。
実務上の射程
控訴審の構造(事後審構造)を説明する際の基礎となる判例である。答案上は、控訴審での証拠調べ請求が却下されたことの適法性を論じる際、刑訴法393条1項の「必要」性の判断が裁判所の広い裁量にあることを示す論拠として活用する。ただし、393条1項但書に該当する場合や、裁量権の逸脱がある場合は例外となる点に留意する。
事件番号: 昭和27(あ)1593 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において控訴趣意として主張せず、かつ原判決が判断していない事項を上告理由とすることは、適法な上告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審手続における訴訟法違反(憲法37条1項違反を実質とするもの)を理由として上告を申し立てたが、当該事項は控訴審において控訴趣意として主張されてお…