判旨
証拠調べが行われた供述調書に基づき事実認定を行うことは適法であり、客観的証拠(衣類等)が犯行時の着用物と断定できない場合に鑑定等の職権調査を行わなかったとしても、訴訟法上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、1.適法な証拠調べを経た供述調書等を判決の証拠とすることの適否、および、2.犯行時の着用物と断定できない証拠について職権で鑑定等の事実取調べを行うべき義務の有無。
規範
裁判所が証拠として採用し、適法な証拠調べを経た証拠(供述調書等)に基づき事実を認定することは訴訟法上正当である。また、特定の物証が犯行に供されたと断定すべき証拠を欠く場合において、これに対してさらなる鑑定等の職権による事実取調べを行うか否かは、裁判所の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人が犯行時に着用していたとされるスキー帽および上衣等の物証について、原審はこれらが本件犯罪当日に被告人が着用していたと断定すべき証拠がないと判断した。弁護人は、これらについて鑑定等の職権調査を行わなかったことが訴訟法違反であると主張し、また、証拠調べをしていない証拠に基づき事実認定が行われた等の理由で上告した。
あてはめ
本件では、第一審の公判において問題の供述調書5通はすべて採用され、証拠調べが行われた趣旨が認められるため、証拠調べをしない証拠を判決の基礎としたとの批判は当たらない。また、原審が本件のスキー帽等を犯行時の着用物と断定できないとした以上、それらについてあえて鑑定を行う必要性は認められず、職権で事実取調べをしなかったことに違法はない。
結論
原判決に証拠則違反や職権調査義務違反の訴訟法違反は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠調べを経た証拠に基づく事実認定の正当性を確認するものである。実務上、職権による事実取調べ(刑訴法298条2項参照)の必要性は、当該証拠の重要性や証明力の程度に依拠することを論証する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(れ)733 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書において被告人が前回の公判調書記載の犯罪事実と同趣旨の供述をした旨が記載されている場合、当該証拠に基づき事実を認定することは適法であり、証拠によらずに事実を認定した違法はない。 第1 事案の概要:被告人らの刑事事件において、原審の第9回公判調書には「裁判長は被告人等に対し、右第5回・第6回…