舊刑訴法第三四五條第一項は「檢事は被告事件の要旨を陳述すべし」と規定し、特に所論のように起訴状に基いて陳述しなければならないという制限を附していないから、苟くも被告事件の要旨である限り之れを如何ように陳述しても差支えないものであることは、當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第六六八號同二三年一〇月二六日第三小廷判決)
公訴事實陳述の方法
舊刑訴法345條1項
判旨
憲法37条2項は申請された証人をすべて喚問する義務を裁判所に課すものではなく、裁判所が必要適切でないと認めて却下しても違憲ではない。また、公判において証拠調べをしていない押収物であっても、没収を言い渡すことは違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 被告人側が申請した証人の全部を却下することが憲法37条2項に違反するか。 2. 公判で証拠調べをしていない押収物を没収できるか。 3. 検察官が第一審判決書に基づき被告事件の要旨を陳述することは適法か。
規範
1. 憲法37条2項の証人喚問権は、被告人側が申請した証人をすべて喚問する義務を裁判所に課すものではなく、裁判所は必要性がないと認めた場合にはこれを却下できる。 2. 公判において証拠調べを行っていない押収物であっても、裁判所は没収の刑を言い渡すことができる。
重要事実
被告人側は原審において証人喚問を申請したが、原審裁判所はこれが必要でないと判断して却下した。また、原審において警察署に領置された出刃包丁が没収の対象となったが、これについて公判での証拠調べが行われなかった。さらに、検察官が起訴状ではなく第一審判決書に記載された犯罪事実に即して被告事件の要旨を陳述した。被告人側は、これらの手続が憲法37条2項や刑事訴訟法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 原審において申請された証人については、裁判所が必要でないと認めて却下したものと認められ、たとえ申請された証人の全部であっても直ちに違憲とはならない。 2. 領置された出刃包丁は公判準備のために提出されたものではなく、刑事訴訟法(旧法)の定める取調を要する証拠物に該当しないため、証拠調べを欠いても違法ではない。 3. 被告事件の要旨陳述は起訴状に基づく必要はなく、第一審判決書が公判請求書と同一性を失わない限り、それに基づく陳述も適法である。
結論
本件各上告を棄却する。原審の証人採用の裁量や証拠調べなき没収、及び第一審判決書に基づく要旨陳述に違法・違憲はない。
実務上の射程
裁判所の証拠採用に関する広範な裁量を認める判例として重要である。実務上、証人尋問の必要性は裁判所が判断するものであり、却下されたことのみをもって直ちに防御権侵害を構成するものではないことを示す。また、没収対象物の証拠調べの要否についても一定の基準を示すものである。
事件番号: 昭和24(れ)3201 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は不必要な証人まで喚問することを義務付けるものではなく、裁判所が審理の経過に鑑み証拠調べの必要がないと認めて証人尋問請求を却下することは、裁判所の合理的な裁量の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原審第一回公判において証人Aの尋問を請求したが、原裁判所はこれ…
事件番号: 昭和50(あ)611 / 裁判年月日: 昭和50年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人尋問の請求を却下することは、特段の事情がない限り裁判所の裁量に属する事項であり、直ちに憲法37条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、刑事裁判の控訴審において特定の証人尋問を請求したが、原審(控訴審)は当該請求を却下した。これに対し被告人側は、証人尋問の却下は…