記録を見るに、AことB並びにCことDの兩名に對し、原審公判廷において辯護人より證人喚問の請求があつたにかかわらず原審はこの請求を却下しながら、右兩名に對する司法警察官代理の聴取書を斷罪の證據に供していることは正の所論指摘のとおりである。しからば原審が前示兩名に對する司法警察官代理の聴取書を本件斷罪の證據に採つたことは、刑訴應急措置法第一二條第一項本文の規定延いて憲法第三七條第二項に違反した違法があるものと斷ずるの外はなく、(昭和二二年(れ)第八四號同二三年四月二一日大法廷判決参照)所論は理由があり、原判決はこの點において破毀を兔がれない。
原審において辯護人の證人喚問の請求を却下しながら司法警察官代理の聴取書を採證した判決の違法
舊刑訴法338條,憲法37條2項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人が公判を通じて犯行を否認し、供述録取書の内容について証人喚問を請求したにもかかわらず、裁判所がこれを却下し、かつ証人尋問に代わる適法な事由(証人不能等)もないまま当該書面を証拠とすることは、憲法37条2項に反する。
問題の所在(論点)
被告人が一貫して犯行を否認し、証拠とされた供述録取書の内容を争うべく証人喚問を請求している場合に、裁判所が証人尋問の手続きを経ることなく当該書面を証拠に採用することが、憲法37条2項(証人審問権)に違反するか。
規範
被告人が供述書の内容に関して訊問を求める趣旨で証人喚問を請求した場合において、証人が公判廷において喚問された形跡がなく、かつ、証人尋問を必要としない特段の事由(刑訴応急措置法12条1項但書、現行法における伝聞例外要件等)が認められない限り、当該供述書を証拠として採用することは、憲法37条2項が保障する証人審問権を侵害し、許されない。
重要事実
被告人は第一審及び控訴審を通じて一貫して犯行を否認していた。控訴審の公判廷において、弁護人は共犯者ら2名(A及びC)の証人喚問を請求したが、原審はこの請求を却下した。その一方で、原審はこれら2名に対する司法警察官代理の聴取書(供述録取書)を被告人の犯行を認定する断罪の証拠として採用した。なお、これらの証人は第一審においても喚問されておらず、また控訴審において喚問が不可能な事由があったことも記録上認められなかった。
あてはめ
本件において、被告人は一貫して否認しており、弁護人による証人喚問の請求は当該聴取書の内容に関する訊問を求める趣旨であったと解される。しかし、記録上、対象となった2名の証人が公判廷で喚問された事実はなく、また当時施行されていた刑訴応急措置法12条1項但書(証人尋問が不可能な場合等の例外)に該当する事由も認められない。それにもかかわらず、原審が証人喚問の請求を却下し、かつ当該聴取書を証拠として事実認定に用いたことは、被告人に保障された対向尋問の機会を不当に奪うものであるといえる。
結論
原判決は憲法37条2項に違反する違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるため、破棄を免れない。本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
憲法37条2項の「証人審問権」を具体化した判例であり、伝聞証拠の証拠能力を検討する際の憲法上の根拠として引用される。被告人が内容を争い証人喚問を求めている以上、原則として公判廷での供述(反対尋問の機会)が必要であり、例外的な事由(現行法における321条各項の要件等)がない限り、書面のみでの認定は許されないという規範を示す。
事件番号: 昭和24(れ)1036 / 裁判年月日: 昭和24年12月28日 / 結論: 棄却
記録を査閲するに、所論のAについては第一審公判廷において辯護人から證人として尋問の請求があつて、同裁判所は右申請を許容しその第二回公判において同人を證人として尋問し、もつて被告人に對して反對尋問の機會を與えていることが認められる。しからば原審において右Aにつき、辯護人から證人尋問の請求があつたのに對し、原審はこれを採用…
事件番号: 昭和50(あ)611 / 裁判年月日: 昭和50年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人尋問の請求を却下することは、特段の事情がない限り裁判所の裁量に属する事項であり、直ちに憲法37条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、刑事裁判の控訴審において特定の証人尋問を請求したが、原審(控訴審)は当該請求を却下した。これに対し被告人側は、証人尋問の却下は…