判旨
公判調書において被告人が前回の公判調書記載の犯罪事実と同趣旨の供述をした旨が記載されている場合、当該証拠に基づき事実を認定することは適法であり、証拠によらずに事実を認定した違法はない。
問題の所在(論点)
先行する公判調書の記載内容を引用・確認する形でなされた供述の記録に基づき事実を認定することが、証拠によらない事実認定として違法となるか。
規範
裁判所が事実を認定するにあたっては、公判調書に記録された供述内容を証拠とすることができる。先行する公判調書の記載内容を引用する形でなされた供述であっても、それが適法に記録されている限り、事実認定の証拠として許容される。
重要事実
被告人らの刑事事件において、原審の第9回公判調書には「裁判長は被告人等に対し、右第5回・第6回公判調書記載の通り犯罪事実を問うたところ、被告人等は孰れも右各公判調書記載と同趣旨に答えた」旨の記載があった。第5回および第6回公判調書には、相被告人らの犯罪事実についての具体的な供述が記載されていた。弁護人は、新刑事訴訟法の規定に基づき、原判決には証拠によらずに事実を認定した違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原審第9回公判において、裁判長が第5回および第6回公判調書に記載された犯罪事実について問い、被告人らがそれと同趣旨の回答をしたことが調書に明記されている。第5回および第6回公判調書には、実際に犯罪事実に関する供述が記載されており、第9回公判での確認を経て、これらの内容は証拠として有効に機能しているといえる。したがって、これら公判調書の記載に基づき事実を認定した原判決の手続きに、証拠に基づかない事実認定(虚無の証拠による認定)という違法は認められない。
結論
原判決に証拠によらず事実を認定した違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の証拠能力や、公判手続の更新等に関連する事実認定の合理性を検討する際の基礎的な判断を示す。もっとも、本判決は旧刑事訴訟法および刑事訴訟法応急措置法下の事案であり、現行法下での伝聞法則(320条1項)や公判調書の証拠能力(321条2項)の解釈にあたっては、現行法の枠組みに従った再検討が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)1138 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の更新後に、更新前の公判期日における証拠調べの結果を直接援用することなく、更新前の公判調書の記載を引用して証拠調べを行う手続は適法である。 第1 事案の概要:被告人の公判において、昭和25年6月27日(第7回公判)の手続が行われた後、弁論の更新がなされた。その後、同年9月26日の公判(第10回…
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。