判旨
公判請求書(起訴状)において、犯罪事実を直接記載せず、一件記録中の「司法警察官意見書」に記載された犯罪事実を引用する方法による公訴提起は適法である。
問題の所在(論点)
公訴事実の特定(旧刑事訴訟法下における公訴提起の有効性)に関し、公判請求書において他の書類(司法警察官意見書)を引用して犯罪事実を表示することが、犯罪事実を明確にしない違法な公訴提起にあたるか。
規範
公訴提起における犯罪事実の特定は、公判請求書に自ら記載する方法のほか、一件記録中に存在する特定の書類(司法警察官意見書等)に記載された事実を引用する方法によってなされても、事実が明確に特定される限りにおいて違法ではない。
重要事実
検察官が公訴を提起する際、公判請求書(現在の起訴状に相当)の犯罪事実欄に具体的な事実を自ら記載せず、「司法警察官意見書記載の犯罪事実」と記して当該意見書を引用した。また、当該意見書の作成名義が「司法警察官代理」であったことや、公判請求書の日付訂正に訂正字数の記載が欠けていた等の形式上の不備も存在した。
あてはめ
まず、引用された「司法警察官意見書」が記録上存在する後日の意見書を指していることは明白であり、作成名義が代理人であっても事実の特定に支障はない。次に、日付訂正についても、作成者の職印が押印されており正当な訂正と認められる。以上から、一件記録中の書類を引用して犯罪事実を示すことは、事案の同一性を特定し被告人の防御権を確保する上で何ら違法とは認められない。
結論
本件公訴提起は有効であり、原審が公訴を受理したことに違法はない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
現行刑事訴訟法256条3項(公訴事実の特定)の解釈において、起訴状には具体的事実を記載すべきであり、他文書の引用は原則として避けるべきだが、実務上、事実が確実に特定されており防御に支障がない限りにおいて、引用による特定も許容されうるとする初期判例の一つとして位置づけられる。
事件番号: 昭和25(あ)1555 / 裁判年月日: 昭和26年4月12日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決が所論A提出の盗難被害届の記載を、原判決挙示の他の証拠と共に綜合して判示被告人の犯行を認定したものであることは所論のとおりである。 二 しかるに原審公判調書によれば、原審においては、ただ「各訊問調書並各聴取書、原審公判調書並判決書、上申書及病気診断書」についてのみ順次読聞け又はその要旨を告げ、次いで押収品並び…
事件番号: 昭和27(あ)3815 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
昭和二六年最高裁判所規則第一五号により改正された刑訴規則第四六条第一項の規定が施行された後、公判調書に裁判長の署名押印がないから憲法第三一条に違反するとの主張は、その前提を欠くものである。
事件番号: 昭和25(れ)457 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
原審が昭和二四年一〇年二四日の再開決定を為すにあたり、被告人に対する窃盗屠場法違反被告事件の記録を姫路区検察庁から取寄せる決定をしたことは所論のとおりであるが、原審裁判長はその第六回公判廷で右取寄記録中の被告人及びAに対する各司法警察官の聴取書を読聞けていることに鑑み、該記録が前記公判廷に顕出されたものであることは明で…