昭和二六年最高裁判所規則第一五号により改正された刑訴規則第四六条第一項の規定が施行された後、公判調書に裁判長の署名押印がないから憲法第三一条に違反するとの主張は、その前提を欠くものである。
憲法違反の主張が前提を欠く事例
刑訴法48条,刑訴規則46条,憲法31条
判旨
刑事訴訟規則46条1項の改正により、公判調書における裁判長の作成関与は署名押印から認印へと変更された。したがって、改正後の規定に基づき裁判長が認印を付した公判調書は適法であり、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟規則46条1項の改正(昭和27年2月1日施行)後において、裁判長が公判調書に署名押印せず、認印を付したにとどまることが、手続上の違法ないし憲法31条違反となるか。
規範
公判調書の作成手続については、刑事訴訟規則46条1項(昭和26年最高裁判所規則第15号による改正後のもの)が定める方式に従うべきである。同条項によれば、公判調書には裁判所書記官が署名押印し、裁判長が認印することを要する。
重要事実
被告人が原審(控訴審)の第5回、第6回、第7回公判調書について、裁判長の署名押印がなく認印のみがなされていることを捉え、これが違法であり憲法31条の定める適正手続に違反すると主張して上告した事案。なお、当該公判調書が作成された時期(昭和27年3月から5月)は、既に改正後の刑事訴訟規則が施行された後であった。
あてはめ
本件における各公判調書には、いずれも裁判所書記官の署名押印及び裁判長の認印がなされている。刑訴規則46条1項は昭和27年2月1日から「公判調書には裁判所書記官が署名押印し、裁判長が認印しなければならない」と改正されており、本件調書の作成時期はこの施行後である。したがって、裁判長が署名押印に代えて認印を付したことは改正後の現行規則に適合する正当な手続であり、違法性は認められない。手続が適法である以上、憲法31条違反の主張も前提を欠くといえる。
結論
本件各公判調書に裁判長が署名押印しなかったことに違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公判調書の形式的要件に関する判例である。答案上では、公判調書の証拠能力が争点となる場合に、刑訴法48条3項・刑訴規則46条1項の要件を充足しているか(作成手続の適法性)を確認するための根拠として活用できる。ただし、現在の実務では認印が通例であり、形式不備が論点になることは稀であるため、手続の適正性を簡潔に指摘する際の補強として用いるのが適切である。
事件番号: 昭和23(れ)1387 / 裁判年月日: 昭和24年2月10日 / 結論: 棄却
原審の公判調書は、粗漏であつて、所論の箇所に文字を削除し認印を施してあるにかかわらず欄外にその削除字數の記載がなく、また文字を削除し欄外に削除字數を記載しながら削除した部分に認印を施してなく、從つて、正に舊刑訴第七二條に違反するものであることは所論のとおりである。しかし、同條は訓示的規定であつて右削除の事實は公判調書の…