判旨
裁判長および裁判所書記官(補)の署名押印がある公判調書については、手続上の瑕疵は認められず、かつ判決において証拠として採用されていない場合には、判決に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
裁判長および裁判所書記官補の署名捺印がある公判調書をめぐり、その作成手続に憲法違反等の違法があるか。また、証拠採用されていない書面の不備が判決に影響を及ぼすか。
規範
公判調書の成立の真正(刑訴法46条等)については、裁判長および裁判所書記官の署名押印の有無によって判断される。また、仮に手続上の違法が主張されたとしても、当該書面が証拠として採用されておらず、判決の基礎となっていない場合には、判決に影響を及ぼすべき違法(刑訴法379条参照)とはならない。
重要事実
上告人は、特定の公判調書について署名捺印の不備等を理由に憲法違反を主張して上告した。しかし、当該記録上の公判調書には裁判長および裁判所書記官補の署名捺印が実際に存在していた。また、原判決は当該調書を証拠として採用していなかった。
あてはめ
本件では、記録上、裁判長および裁判所書記官補の署名捺印が確認できるため、手続の適法性が認められる。さらに、原判決において当該調書が証拠として採用されていない以上、内容のいかんにかかわらず、判決の結果に影響を及ぼすことは明白に否定される。
結論
本件上告には理由がないため、棄却される。
実務上の射程
公判手続の瑕疵を理由とする控訴・上告において、当該瑕疵が「判決に影響を及ぼすべき」ものである必要があることを示す。証拠として採用されていない資料の形式的不備は、原則として判決への影響が否定されるという実務上の処理を裏付けるものである。
事件番号: 昭和23(れ)1387 / 裁判年月日: 昭和24年2月10日 / 結論: 棄却
原審の公判調書は、粗漏であつて、所論の箇所に文字を削除し認印を施してあるにかかわらず欄外にその削除字數の記載がなく、また文字を削除し欄外に削除字數を記載しながら削除した部分に認印を施してなく、從つて、正に舊刑訴第七二條に違反するものであることは所論のとおりである。しかし、同條は訓示的規定であつて右削除の事實は公判調書の…
事件番号: 昭和27(あ)3815 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
昭和二六年最高裁判所規則第一五号により改正された刑訴規則第四六条第一項の規定が施行された後、公判調書に裁判長の署名押印がないから憲法第三一条に違反するとの主張は、その前提を欠くものである。