判旨
公判調書の作成手続において、裁判所書記官が署名押印し、かつ裁判長が認印を施す必要があるとした刑訴規則46条(昭和26年改正当時)の規定に違反するとの主張は、単なる訴訟法違反の主張にすぎず、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
公判調書への裁判所書記官による署名押印および裁判長による認印の欠如、あるいはその手続的瑕疵を理由として憲法違反を主張することが、刑事訴訟法405条の上告理由として認められるか。
規範
刑事訴訟法405条の上告理由として憲法違反が主張される場合であっても、その実質が単なる訴訟法違反(刑訴規則違反を含む)の主張に帰するときは、正当な上告理由とは認められない。公判調書の署名押印・認印の手続不備は、特段の事情がない限り、単なる訴訟法違反に留まる。
重要事実
被告人が第二審の手続において作成された公判調書の有効性を争った事案。昭和26年改正後の刑事訴訟規則46条によれば、「公判調書には、裁判所書記が署名押印し裁判長が認印しなければならない」と定められていたが、本件ではこの手続的要件の遵守をめぐり、憲法違反を名目として上告がなされた。
あてはめ
弁護人は本件について憲法違反を主張している。しかし、その主張の実質的な内容は、刑事訴訟規則46条に定める公判調書の作成方式(書記官の署名押印および裁判長の認印)が遵守されていないという点にある。これは手続法上の形式的要件に関する不備の指摘であり、憲法上の権利を直接侵害するものとはいえず、単なる訴訟法違反の主張に帰するものと解される。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却される。公判調書の作成方式の不備は、原則として憲法違反の問題を生じさせない。
実務上の射程
刑事訴訟規則に定める調書作成の形式的要件違反が、直ちに憲法違反(上告理由)にならないことを示す。実務上、公判調書の証明力(刑訴法52条)を争う場面で、手続的瑕疵がどの程度の法的効果(絶対的上告理由か相対的訴訟法違反か)を持つかを判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和27(あ)5150 / 裁判年月日: 昭和28年2月10日 / 結論: 棄却
刑事訴訟規則四四条によれば、所論の諸事項(註。被告人保護のため黙秘権等を告知すること等を指す)は、公判調書に記載することを要しないものである。それ故にそれ等の記載がなかつたからとて違法があつたものということはできない。