判旨
公判調書の記載の正確性について異議の申立てがなく、かつ裁判官の認印が押捺されている場合には、当該公判調書の記載の正確性を否定することはできない。
問題の所在(論点)
公判調書の記載内容の正確性が争われる場合、どのような事情があればその正確性を認めることができるか。刑事訴訟法上の公判調書の証拠的価値と憲法31条(適正手続)の関係が問題となる。
規範
公判調書の記載の正確性については、被告人および弁護人による異議の申立ての有無、および裁判官による認印の押捺という手続的適正が確保されているか否かによって判断される。これらの要件を満たす場合、公判調書の記載内容は証拠能力および証明力を有するものとして扱われる。
重要事実
第一審の第三回公判調書の記載に基づき事実認定がなされたが、上告人は当該調書の記載が正確性を欠くと主張した。しかし、被告人および弁護人は当該公判調書の記載の正確性について異議を申し立てた形跡がなかった。また、第一審記録が控訴審に送付される前に、当該調書には裁判官の認印が押捺されていた。
あてはめ
本件では、被告人側が公判調書の正確性について適時に異議を申し立てておらず、手続上の異議提出の機会が保障されていたといえる。さらに、裁判官の認印という形式的真正を担保する要件も具備している。したがって、当該調書の記載内容に正確性を期し難いとする主張は客観的な根拠を欠き、憲法31条に違反するような不適正な手続があったとは認められない。
結論
公判調書の記載に正確性を期し難いとの主張は採用できず、憲法違反の主張も前提を欠くため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の絶対的証明力(刑訴法52条)に関連し、調書の正確性を争うための実務上の前提条件(異議申立ての有無や署名押印の確認)を示すものである。答案上は、公判調書を証拠として用いる際の形式的適格性を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)3815 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
昭和二六年最高裁判所規則第一五号により改正された刑訴規則第四六条第一項の規定が施行された後、公判調書に裁判長の署名押印がないから憲法第三一条に違反するとの主張は、その前提を欠くものである。