一 刑訴法第三九三条第一項本分が、控訴審における事実取調の必要の有無を裁判所の裁量に委ねたことは、憲法に違反しない。 二 しかし、現行法上控訴審はいわゆる事後審として認められているのであつて控訴審における事実の取調は第一審判決の当否を判断するに必要な範囲にかぎられるのであり、その必要の有無は刑訴三九三条一項但書の場合を除き裁判所の裁量に委ねられているのである。
一 刑訴法第三九三条の合憲性 二 刑訴第三九三条一項本文の意義
刑訴法393条1項本文,憲法11条,憲法12条,憲法37条
判旨
刑事訴訟法における控訴審の構造は事後審であり、事実取調べの範囲は第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限定される。このような事後審構造の採用は、裁判の審級制度を法律に委ねる憲法の趣旨に照らし合憲である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法が控訴審を覆審ではなく事後審として規定し、事実取調べを制限していることは、憲法に違反しないか(控訴審の構造と審級制度の合憲性)。
規範
現行刑事訴訟法における控訴審は、第一審判決の当否を事後的に審査する「事後審」としての性格を有する。したがって、控訴審における事実の取調べは、第一審判決の当否を判断するに必要な範囲に限られ、その取調べの要否は、刑訴法393条1項但書の場合を除き、裁判所の裁量に委ねられる。また、審級制度の具体的設計は、憲法81条(違憲審査権)の場合を除き、法律により適当に定め得る事柄である。
重要事実
被告人が、控訴審は覆審として事件の実体につき真実発見のため再度の事実取調べを行うべきであると主張し、現行刑訴法が控訴審を事後審としている点は違憲であるとして上告した事案。
あてはめ
憲法上、審級制度のあり方は立法府の裁量に委ねられており、必ずしも覆審構造を採用し、一から事実取調べをやり直すことまで要求されているわけではない。刑訴法が控訴審を第一審判決の当否を検討する事後審と定め、事実取調べの要否を原則として裁判所の裁量(刑訴法393条1項)としたことは、適正な審理の確保を目指す立法政策の範囲内といえる。
結論
現行刑訴法が控訴審を事後審とし、事実取調べを第一審判決の当否判断に必要な範囲に限定したことは合憲である。
実務上の射程
控訴審における事実取調べの裁量権を認める根拠となる判例である。答案上は、刑訴法393条1項に基づく事実取調べ請求の当否を論じる際や、控訴審の構造が事後審であることを前提とした論理展開(職権調査の範囲等)を行う際の理論的基礎として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)62 / 裁判年月日: 昭和25年4月20日 / 結論: 棄却
控訴裁判所が刑訴法第四〇〇條但書によつて直に判決する場合、同法第四〇四條によつて第一審公判に關する規定を準用し事實の取調並びに、證據調及び控訴裁判所において取調べた證據を資料として覆審をなし辯論を繰り返えし被告人又は辯護人をして最終の陳述をなさしめるべきものではない。