有罪判決の證據説示としては判示事實を認定するに至つた證據を舉示すれば足りるのであつて其證據を取捨した理由を明示する必要はない
證據取捨の理由明示の要否
刑訴法360條1項,刑訴法337條
判旨
没収の対象物が被告人の所有に属するか否かは「犯罪事実」そのものではないため、その認定根拠を判決書において証拠に基づき説明することは不要である。
問題の所在(論点)
没収の対象となる物件が被告人の所有に属するか否かという事実は、刑事訴訟法上の「犯罪事実」に該当し、判決書において証拠による裏付けの説明を要するか。
規範
有罪判決の証拠説示においては、判示事実(犯罪事実)を認定するに至った証拠を挙示すれば足り、その証拠を取捨した理由までを明示する必要はない。また、没収の要件となる物件の所有権の帰属は、犯罪を構成する事実そのものではないため、判決書においてその認定理由を説明することを要しない。
重要事実
被告人が強盗罪等の犯行に及んだ際、没収の対象となった物件(仕込杖)が被告人の所有に属するかどうかが争点となった。原判決は、没収物件が被告人の所有であることの証拠を明示していなかったため、被告人側が採証法則違反および理由不備を理由に上告した。
事件番号: 昭和23(れ)2014 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
しかし舊刑訴法第四一〇條第一三號に「法律の規定により公判廷において取調ぶべき證據の取調をなさざるとき」とあるのは同法第三四二條のように、特に法律の明文を以て公判廷において取調ぶべきことを規定してある場合に、その取調をしなかつたような場合を指すのであつて裁判所が必要と認めない證據書類において法廷の證據調をしない場合の如き…
あてはめ
最高裁は、没収物件が被告人の所有であるか否かは「犯罪事実」ではないと判示。したがって、有罪判決において犯罪事実を認定するために掲げられた証拠が、必ずしも没収物件の所有権を証明するものである必要はない。原判決が犯罪事実に関する証拠のみを掲げ、没収物件の所有権に関する証拠を明示しなかったとしても、判決に違法はないと解される。
結論
没収物件が被告人の所有である事実は犯罪事実ではないため、判決書にその認定根拠を説明する必要はなく、原判決の措置は適法である。
実務上の射程
没収の要件認定に関する判決書の記載事項を画した判例。答案上は、刑訴法335条1項の「罪となるべき事実」の範囲を論じる際に、付随的処分である没収の要件はこれに含まれず、厳格な証明や詳細な証拠説示の対象から外れることを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)583 / 裁判年月日: 昭和23年10月14日 / 結論: 棄却
一 暴行又は脅迫を以て他人の占有に屬する財物を強取すれば、たといその物が自己の財物であつてもなお強盜罪の成立を妨げないのであるから、原審が右孫右衞門の占有に屬する金品を強取した旨の事實を認定した以上、「その財物が何人の占有に屬するか」又は「何故に同人の占有に屬したるかの理由」等に關して特に説示しなかつたとしても、強盜罪…