一 暴行又は脅迫を以て他人の占有に屬する財物を強取すれば、たといその物が自己の財物であつてもなお強盜罪の成立を妨げないのであるから、原審が右孫右衞門の占有に屬する金品を強取した旨の事實を認定した以上、「その財物が何人の占有に屬するか」又は「何故に同人の占有に屬したるかの理由」等に關して特に説示しなかつたとしても、強盜罪の判示として何等缺くるところはない。 二 公判中判事の更迭があつたため手續を更新して審判を行つた場合は、刑訴法第四一〇條第四號の「審理ニ關與セサリシ判事判決ニ關與シタルトキ」に該らない。 三 刑訴應急措置法第一三條第二項の規定が、憲法に違反するものでないということは、論旨も指摘する通り、既に當裁判所大法廷の判決によつて明らかにせられているのであつて、所論の事由を以てしても、今この判例を變更すべき必要ありとは認め得ない。
一 強盜罪の目的たる財物に關する判示の程度 二 判事の更迭により公判手續を更新した場合と刑訴法第四一〇條第四號 三 刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
刑法236條,刑法354條,刑訴法360條1項,刑訴法410條4號,刑訴應急措置法13條2項
判旨
暴行又は脅迫を用いて他人の占有する財物を強取した場合は、たとえ当該財物が自己の所有物であったとしても強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗罪(刑法236条1項)において、強取の対象が「自己の所有物」であった場合、同罪の成立は否定されるか。また、判決において占有の帰属理由まで説示する必要があるか。
規範
暴行又は脅迫を以て他人の占有に属する財物を強取すれば、たとえその物が自己の財物であっても、なお強盗罪の成立を妨げない。したがって、裁判所が「他人の占有に属する」事実を認定した以上、当該財物の所有権の帰属や、占有に至った詳細な理由を特に説示しなかったとしても、強盗罪の判示として欠けるところはない。
重要事実
被告人がAの管理下(占有下)にある金品を、暴行又は脅迫を用いて強取した。原審は、当該金品がAの占有に属するものであることを認定したが、その財物が誰の所有物であるか、あるいはなぜAが占有するに至ったのかという具体的経緯については詳細な説示を行わなかった。これに対し、被告人側は判示不尽の違法があるとして上告した。
あてはめ
強盗罪の保護法益には財物の占有自体も含まれると解される。本件において、原判決は「A管理下」という表現により、対象財物がAの占有下にあることを事実として適法に認定している。この認定があれば、客体が仮に被告人自身の財物であったとしても、他人が適法・違法を問わず現に占有している以上、それを奪う行為は強盗罪を構成する。ゆえに、所有権の所在や占有の由来という詳細な背景事情を判示しなかったことは、犯罪の成立を左右する違法とはいえない。
結論
自己の財物であっても、他人の占有下にあるものを強取すれば強盗罪が成立する。原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自救行為が制限される法理を背景に、刑法242条の趣旨を強盗罪にも及ぼす重要な判例である。司法試験においては、強盗罪の客体について、所有権の有無にかかわらず「他人の占有」を侵害すれば足りることを簡潔に述べる際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)1114 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 記録によれば、被告人の辯護人は原審の公判廷において、被告人の精神状態を明らかにするために精神鑑定その他の證據調の請求をしたことは認められるが、それだけでは被告人が本件犯行當事に心神喪失者若しくは心神耗弱者等であつたことの事實上の主張がなされたものとは言うことができない。 二 裁判所法第二六條第一項は違憲でない。(昭…