強盜の目的で會社の事務所に押入り、居合わせた事務員全部を縛つて、そこに有つた洋服類を着込みその他の物は、荷造りをして持出すばかりにした以上は強盜の既遂を以て論ずべきである。
強盜の既遂時期
刑法236条1項
判旨
強盗罪における財物の「強取」は、犯人が目的物を自己の支配下に置いた(取得した)時点をもって既遂となり、必ずしも現場からの持ち出しを要しない。
問題の所在(論点)
強盗罪において、犯人が財物を犯行現場から外部へ持ち出していない状態で逮捕された場合、刑法236条1項の「強取」の既遂が認められるか。
規範
強盗罪の既遂時期は、暴行・脅迫によって相手方の反抗を抑圧し、財物を自己の事実上の支配内に移した時点(取得説)である。財物を犯行現場から外部へ搬出することは既遂の必須要件ではなく、被害者が奪われた物を取り返し得ない状態に置かれ、犯人がこれを持出せる状態に置けば足りる。
重要事実
被告人は共犯者と共に被害会社の事務所に侵入し、居合わせた男女事務員全員を縛り上げ、全く抵抗できず、奪われた物を取り返せない状態に置いた。その後、被告人らは洋服類を着込み、その他の物品を荷造りして、今まさに持ち出そうとしたところで警察官に踏み込まれ、捕縛された。
あてはめ
被告人らは被害者を拘束することで反抗を抑圧し、目的物をいつでも持ち出せる状態で自己の管理下に置いている。洋服を着込み、他の物品を荷造りしたという事実は、客観的に見て財物に対する被害者の占有が完全に排除され、被告人の事実上の支配が確立されたことを意味する。したがって、現場から搬出する前であっても、既に財物を自己の支配下に置いた(取得した)といえる。
結論
被告人は財物の支配を取得したといえるため、強盗既遂罪が成立する。
実務上の射程
窃盗罪や強盗罪の既遂時期について、物理的な搬出を要しないとする「取得説」の立場を明確にした判例である。答案上は、財物の形状、大きさ、占有の態様、犯人の支配の確実性を考慮し、被害者の占有が断絶して犯人の占有が確立したといえるかを具体的に検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和23(れ)583 / 裁判年月日: 昭和23年10月14日 / 結論: 棄却
一 暴行又は脅迫を以て他人の占有に屬する財物を強取すれば、たといその物が自己の財物であつてもなお強盜罪の成立を妨げないのであるから、原審が右孫右衞門の占有に屬する金品を強取した旨の事實を認定した以上、「その財物が何人の占有に屬するか」又は「何故に同人の占有に屬したるかの理由」等に關して特に説示しなかつたとしても、強盜罪…
事件番号: 昭和24(れ)1750 / 裁判年月日: 昭和24年12月22日 / 結論: 棄却
一 犯罪の日時、場所は罪となるべき事實ではないから、原判示のごとく犯行の同一性を特定し、相當法條を適用し得る程度の判示あれば足りるものであるこというまでもない。また共謀の日時、場所はこれを判示する必要のないものであるから、原判決が判示のごとく共謀したと判示した以上判示に欠くるところはない。また判示のように「國鐵當局係員…
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…