一 犯罪の日時、場所は罪となるべき事實ではないから、原判示のごとく犯行の同一性を特定し、相當法條を適用し得る程度の判示あれば足りるものであるこというまでもない。また共謀の日時、場所はこれを判示する必要のないものであるから、原判決が判示のごとく共謀したと判示した以上判示に欠くるところはない。また判示のように「國鐵當局係員の保管に係る列車の積荷」と判示した以上被害物件の保管者並びに所有者が被告人及び共犯者以外の「他人」であることまことに明白であるから窃盗罪の客体の判示として欠くるところはない。 二 原判決が判示事實として所論摘示のように判示したことは、所論のとおりである。しかし同判示就中「突落し以て窃盗し」との判示とその舉示の證據殊に原審公判廷における被告人Aの突落した後同被告人等兩名は間もなく突落した現場に行き品物をAの家に持ち歸つた旨の供述とを對照すれば、原判示は、積荷を列車外に突落し拾う計畫を實行して拾つた趣旨をも含むものと解することができる。しかのみならず、鐵道線路の地理現場の事情に精通していると認められる鐵道機關助士である被告人等が判示のごとく共謀計畫して判示のごとく定められた目的の地點で積荷を列車外に突落した本件においては、特をの事情の認められない限り、その目的の地點に積荷を突落したるきその物件は他人の支配を脱して被告人等凶暴者の實力支配内に置かれたものを見ることができる。されば、原判決の窃盗既遂の判示は違法なものとして原判決を破棄しなければならない欠點があるものとはいえない。
一 犯罪の日時、場所の判示の程度−共謀の日時場所の判示の要否−窃盗罪における被害物件の所有者の判示の程度 二 貨物列車から積荷を突落す方法による窃盗罪の成立
舊刑訴法360條1項,刑法235條
判旨
鉄道の積荷を列車外に突き落として窃取する計画において、地理に精通した者が目的の地点で突き落とした場合、特段の事情がない限り、その時点で物件は他人の支配を脱し犯人の実力支配内に置かれたものとして窃盗既遂が成立する。
問題の所在(論点)
鉄道の積荷を列車外に突き落とした段階で、窃盗罪の既遂(占有の取得)が認められるか。
規範
窃盗罪(刑法235条)の既遂時期は、目的物が他人の占有(支配)を脱し、行為者の実力的支配内に置かれた時(占有の取得時)である。鉄道輸送中の物品を特定の地点で投下する形態の犯行においては、地理的状況や犯人の属性、計画の内容に照らし、投下によって直ちに犯人の支配が及んだといえる場合には、投下時をもって既遂と解する。
重要事実
鉄道機関士である被告人らは、列車輸送中の積荷を特定の地点で列車外に突き落として盗み出すことを共謀した。被告人らは鉄道線路の地理や現場事情に精通しており、あらかじめ定められた目的の地点において、計画通り積荷を列車外に突き落とした。その後、被告人らは突き落とした現場へ行き、品物を自宅へ持ち帰った。
あてはめ
本件において被告人らは、鉄道線路の地理・現場事情に精通した鉄道機関士という立場にあり、共謀に基づき、あらかじめ定めた目的地点で積荷を突き落としている。このような状況下では、積荷を突き落とした時点で、その物件は既に他人の支配を離れ、被告人ら共謀者の実力支配内に置かれたものと評価できる。したがって、現実に品物を拾い上げた時点を待たず、突き落とした時点で占有の移転が完了したといえる。
結論
鉄道線路の地理に精通した者が、目的地点で積荷を突き落としたときは、特段の事情がない限り、その時点で窃盗既遂罪が成立する。
実務上の射程
「占有の移転」の判断において、物理的な把持だけでなく、場所的・属性的な状況から生じる「実力支配」の有無を重視する。答案では、犯行場所の秘匿性や犯人の属性(現場への精通度)を具体的事実として拾い、投下行為が単なる占有侵害(未遂)に留まらず、占有取得(既遂)に至っていることを論証する際に活用する。
事件番号: 昭和31(あ)3129 / 裁判年月日: 昭和32年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪における既遂時期は、目的物を自己の実力的支配下に移した時点(取得)であり、共犯者が重量のあるケーブル線を持ち上げて運搬を開始し、一定の距離を移動させた場合には既遂が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者A・Bと共謀し、炭鉱内に置かれていた鎧装ケーブル線約16メートルを窃取しようとした…