論旨も認めているように豫審の訊問調書には豫審判事代理が司法警察官意見書記載の犯罪事實を讀み聞かせて斯様な事實につき強制處分の請求があつたが何か辯解することがあるかと問うたのに對して、被告人等はその通り相違ありません。別に辯解することもありませんと答えた旨を記載してあるこの被告人等の答は單に意見の陳述たるのみに止まらず犯罪事實を自ら認めた供述でもある原判決に「豫審判事代理の右訊問調書は被告人等が…(中略)…判示金品を強奪した旨の各被告人の自認の供述記載」と言つているのは右の供述記載を指していること明かであるから、これは論旨に主張するように供述記載ないものを記載ありと誤認して之れを採用したものではない。從つて、原判決が右の供述記載を證據として採用するにあたり、警察官の意見書を合せて示さなかつたとしても論旨に言うように記載のない證據に基いて事實を認定したことにはならない。
司法警察官の意見書記載の犯罪事實を自認した豫審訊問調書を證據に採る場合と同意見書判示の要否
刑訴法336條,刑訴法340條,刑訴法341條
判旨
予審判事代理に対し、司法警察官意見書記載の犯罪事実に相違ない旨を述べた被告人の供述は、単なる意見の陳述に留まらず自認の供述にあたる。また、強盗罪における暴行・脅迫の程度は、被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要する。
問題の所在(論点)
1. 司法警察官の意見書に示された犯罪事実を認める旨の被告人の供述が、犯罪事実を認定する証拠となり得るか。 2. 被告人が行った脅迫が、恐喝罪ではなく強盗罪を構成する「反抗を抑圧する程度」のものといえるか。
規範
強盗罪(刑法236条1項)が成立するためには、犯行の手段として用いられた暴行または脅迫が、客観的に見て被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。また、証拠の取捨選択および事実認定は、裁判所の自由な合理的な判断に委ねられる。
重要事実
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…
被告人両名は、司法警察官の意見書に記載された犯罪事実について、予審判事代理から弁解の有無を問われた際、「その通り相違ありません。別に弁解することもありません」と回答した。この内容は予審訊問調書に記載された。第一審および原審は、当該調書を含む証拠に基づき、被告人らが被害者らに対し反抗を抑圧する程度の脅迫を加えて金品を強取したと認定し、強盗罪の成立を認めた。被告人側は、当該供述は単なる意見陳述に過ぎず証拠能力がないこと、および本件は恐喝罪にとどまるべきであることを理由に上告した。
あてはめ
1. 予審における被告人の応答は、読み聞かされた具体的犯罪事実を自ら認める内容を含んでおり、単なる意見陳述ではなく自認の供述としての性質を有する。したがって、これを証拠として事実認定に用いることは適法である。 2. 原審が採用した証拠群によれば、被告人らが行った脅迫は、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであったと認められる。被告人側は恐喝罪に当たると主張するが、原審による証拠の取捨選択および事実認定に合理性を欠く点は認められない。
結論
被告人らの所為は強盗罪を構成する。予審調書の証拠採用および強盗罪の認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
強盗罪の「反抗抑圧」の要件について、事案の具体的性質を考慮し、恐喝罪との区別を裁判所の事実認定の問題として処理する際のリファレンスとなる。また、前段階の書面(意見書等)の内容を肯定する供述の証拠価値についての基礎的な判断を示している。
事件番号: 昭和23(れ)322 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
官選辯護人を選任せらるるのは第一回公判期日前適當の時期即ち辯護人準備の出來得る時期であることは出來る限り望むべき事ではあるが實際問題としては第一回公判期日の前日或はその當日私選辯護人が選任せらるることは屡々ある實例であり又法律問題としては公判當日の選任はいけないと言う論據や理由は別段にないのである。而して記録に依れば本…