一 他人に暴行又は脅迫を加えて財物を奪取した場合に、それが恐喝罪となるか強盜罪となるかは、その暴行又は脅迫が、社會通念上一般に被害者の反抗を抑壓するに足る程度のものであるかどうかと云う客観的基準によつて決せられるのであつて、具體的事案の被害者の主観を基準としてその被害者の反抗を抑壓する程度であつたかどうかと云うことによつて決せられるものではない。 二 辯論の再開は裁判所の職權に屬するところであつて、辯護人の爲す再開の申請は右職權の發動を促すだけのものである。從つて裁判所が再開の必要がないと認めた以上、その申請について決定をする必要はないのである。 三 辯論終結後の證據調の申請は、裁判所が辯論再開の必要がないと認めて辯論を再開しなかつた場合には、何等訴訟法上の効果を生ずるものではないから、これに對して決定をする必要はないのである。
一 恐喝罪と強盜罪との區別の基準と被害者の主観 二 辯論再開の申請に對する決定の要否 三 辯論再開をしなかつた場合辯論終結後の證據調の申請に對する決定の要否
刑法236條,刑法249條,舊刑訴法350條,舊刑訴法344條
判旨
暴行・脅迫が強盗罪か恐喝罪のいずれに該当するかは、被害者の主観ではなく、社会通念上一般に反抗を抑圧するに足りる程度かという客観的基準によって決すべきである。
問題の所在(論点)
強盗罪の構成要件である「暴行又は脅迫」の程度について、被害者の主観を基準とすべきか、それとも社会通念に基づく客観的基準によるべきか。
規範
暴行又は脅迫が強盗罪(刑法236条1項)を構成するか、あるいは恐喝罪(同法249条1項)にとどまるかは、その暴行・脅迫が「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度」のものであるかという客観的基準によって決定される。被害者の主観において現に反抗が抑圧されたか否かという主観的基準によるべきではない。
重要事実
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…
被告人ら3名は、昭和22年8月23日午後11時半頃、被害者宅を訪れた。そこで被害者に対し、凶器である匕首(あいくち)を示して脅迫し、被害者が差し出した現金200円を強取し、さらに財布を奪い取った。弁護側は、当該脅迫が被害者本人の反抗を抑圧する程度に至っていなかったため、強盗罪ではなく恐喝罪が成立すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人ら3名が深夜に被害者宅に押し入り、殺傷能力のある匕首を突きつけて脅迫した事実に照らせば、かかる行為は社会通念上、一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものといえる。仮に被害者がたまたま特段の主観的事情により現に反抗を抑圧されるに至らなかったとしても、行為の客観的性質が変わるものではない。したがって、本件脅迫は強盗罪の暴行・脅迫に該当すると評価される。
結論
本件行為は強盗罪に該当し、恐喝罪にとどまるとする弁護人の主張は認められない。
実務上の射程
強盗罪の「反抗抑圧」の客観説を確立した判例であり、答案作成上の基礎知識となる。実務上は、犯行の時刻、場所、人数、凶器の有無、暴行・脅迫の具体的内容等の客観的態様から、一般人を基準に反抗抑圧の程度を論証するために用いる。事案により、被害者が幼児や老人である場合には、その属性も「客観的事情」の一部として考慮され得る点に注意を要する。
事件番号: 昭和23(れ)322 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
官選辯護人を選任せらるるのは第一回公判期日前適當の時期即ち辯護人準備の出來得る時期であることは出來る限り望むべき事ではあるが實際問題としては第一回公判期日の前日或はその當日私選辯護人が選任せらるることは屡々ある實例であり又法律問題としては公判當日の選任はいけないと言う論據や理由は別段にないのである。而して記録に依れば本…