判旨
強盗罪の構成要件たる「他人の財物」を判示する際、法令適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具体的であれば足り、その種類・数量・価格等を詳細に判示する必要はない。
問題の所在(論点)
有罪判決の事実摘示(刑訴法335条1項)において、強盗罪の客体である「他人の財物」をどの程度詳細に特定すべきか。特に、財物の価格等の証拠や詳細な明細の判示が必要か。
規範
有罪判決において罪となるべき事実を摘示するにあたっては、法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具体的であれば足りる。強盗罪における「他人の財物」についても、財物の種類、数量、価格等を一々詳細に判示することは要せず、財物性が客観的に明らかになる程度の摘示で足りる。
重要事実
被告人らは、他人の財物を強取したとして強盗罪に問われた。原判決(第一審判決を維持したもの)においては、被害品について「衣類合計四四点」とのみ判示されており、個々の衣類の詳細な種類や数量、それぞれの具体的な価格等については証拠に基づいた詳細な判示がなされていなかった。これに対し被告人側は、財物の価格等の証拠が示されていないことは適正手続(憲法31条)や刑訴法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は被害品を「衣類合計四四点」と判示している。この判示内容は、強盗罪の客体が他人の所有する「財物」であることを示すに十分な具体性を備えている。強盗罪の構成要件を充足するか否かを判断し、法令を適用する基礎としては、このように目的物の概括的な性質と数量が示されていれば足りる。したがって、価格等の証拠を個別に示さなくとも、判決に違法があるとはいえない。
結論
強盗罪の客体である財物の判示は、法令適用の基礎として必要な程度に具体的であればよく、衣類合計44点との判示はこれに適合する。したがって、価格等の詳細な証拠・判示を欠くとしても違法ではない。
実務上の射程
罪となるべき事実(刑訴法335条1項)の摘示の程度に関する一般論として活用できる。特に窃盗や強盗等の領得罪において、被害品が多数に及ぶ場合に、どの程度まで個別化・具体化すべきかの限界事例を示すものである。実務上は、他の犯罪事実と区別できる程度に特定されていれば足り、詳細な目録や評価額の判示までは必須ではないとする射程を持つ。
事件番号: 昭和28(あ)1013 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 棄却
本件起訴状には強取物件として「衣類等十点等」と記載されており、第一審判決は右物件の内容点数、所有関係等を明示したにすぎないのであるから、それによつて訴因の同一性は何ら害されていないばかりでなく(刑訴二五六条三項後段参照)、被告人等の防禦に事実上不利益を及ぼす虞れのなかつたことは、本件訴訟の経過に徴し明らかであるから、原…
事件番号: 昭和24(れ)552 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
しかし、有罪判決に示すべき強盜罪の一構成要件たる「他人の財物」であることを判示するには、該構成要件に該當するか、否かを判定するに足る程度の具體的事實を掲げさえすれば差支えないものであつて所論のように、目的物の確定數を表示することを要するものではない。そして原判決は、A所有の中古三つ揃背廣服一着外衣類七點位と判示していて…