強盜罪の構成要件たる「他人ノ財物」を判示するには、犯人及び共犯者以外の者の所有に屬する如何なる財物なりや等要するに、法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具體的であれば足りる。
強盜罪における「他人ノ財物」の判示程度
刑法236条1項,刑訴法360条1項
判旨
強盗罪の構成要件である「他人の財物」を判示するには、犯人及び共犯者以外の者の所有に属するいかなる財物であるか等、法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具体的であれば足りる。財物の種類、数量、価格、あるいは各物品が誰の所有・保管に属するかを一々詳細に判示する必要はない。
問題の所在(論点)
強盗罪の有罪判決において、判決書に記載すべき「罪となるべき事実」として、他人の財物の内容(種類、数量、帰属等)をどの程度具体的に特定して判示する必要があるか。
規範
刑事訴訟法335条1項(旧刑訴法360条)にいう「罪となるべき事実」とは、犯罪の構成に必要な具体的事実を指す。強盗罪における「他人の財物」の判示においては、法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具体的であれば足り、財物の種類、数量、価格、あるいは個々の物品の所有権や保管関係の詳細までを一々特定して判示することまでは要しない。
重要事実
被告人がA方において、同人の所有または保管に係るシンガーミシン1台、衣類生地等24点、冬外套24着、同生地113着分(価格合計約15万2050円相当)を強取した。原判決がこれらの被害品を一括して判示したことに対し、上告人は、財物の種類・数量・価格や、いずれの物品が誰の所有・保管に属するかを詳細に判示していないため、構成要件たる事実の判示として不十分であると主張した。
あてはめ
原判決は、被害場所を「A方」とし、被害品について「同人の所有又は保管に係る」ミシン、衣類生地、外套等の品目および数量、ならびに合計価格を明示している。これは、当該財物が「犯人及び共犯者以外の者の所有に属する財物」であることを示すのに十分な内容といえる。強盗罪の成否を判断し、刑法236条1項を適用するための基礎となる事実は具体的に示されており、それ以上に各物品ごとの詳細な属性や帰属関係を個別具体的に列挙しなくても、罪となるべき事実の判示として欠けるところはない。
結論
法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具体的であれば足りるため、本件の判示は適法である。
実務上の射程
強盗罪や窃盗罪等の財産犯において、判決書に記載すべき被害財物の特定程度に関する規範を示したもの。実務上、多数の被害品がある場合に、それらを包括的に表示しても、構成要件該当性を判断できる程度の具体性があれば、理由不備の違法とはならないことを明確にしている。答案上は、事案の特定が問題となる場面(訴因変更の要否等)の判断材料としても参照しうる。
事件番号: 昭和28(あ)1013 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 棄却
本件起訴状には強取物件として「衣類等十点等」と記載されており、第一審判決は右物件の内容点数、所有関係等を明示したにすぎないのであるから、それによつて訴因の同一性は何ら害されていないばかりでなく(刑訴二五六条三項後段参照)、被告人等の防禦に事実上不利益を及ぼす虞れのなかつたことは、本件訴訟の経過に徴し明らかであるから、原…
事件番号: 昭和24(れ)552 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
しかし、有罪判決に示すべき強盜罪の一構成要件たる「他人の財物」であることを判示するには、該構成要件に該當するか、否かを判定するに足る程度の具體的事實を掲げさえすれば差支えないものであつて所論のように、目的物の確定數を表示することを要するものではない。そして原判決は、A所有の中古三つ揃背廣服一着外衣類七點位と判示していて…
事件番号: 昭和22(れ)92 / 裁判年月日: 昭和22年12月4日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することは要しない。數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示するの外、その連續した行爲の始期終期回數等を明かにし、且つ財産上の犯罪で、被害者又は贓額に異同があるときは、被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員數を掲…