原審の採用した證據によると判示の場所でA保管に係る名古屋知b區a町B株式會社が陸軍者から拂下を受けた原毛約一二梱が盜難にかかつた事實と被告人が原毛を取扱つた事實は判るけれども盜難にかかつた原毛と被告人の取扱つた原毛が同一のものであることは原判決舉示の證據からはこれを認めることができないのであつて、從つてまた被告人が判示原毛を窃取した事實は到底認めることができないのである。然らば原判決が右證據により判示事實を認定したことは證據に基かないので事實を認定した違法があるから本論旨は理由があり原判決はこの點において破棄を免れない。
證據に基かないで事實を認定した判決の違法
舊刑訴法336條,舊刑訴法410條19號
判旨
窃盗罪の成立には、被害品と被告人が取り扱った物件との同一性が証拠によって認められる必要があり、同一性の証明がないまま有罪とするのは証拠に基づかない事実認定として違法である。
問題の所在(論点)
窃盗罪の認定において、被害品と被告人の取扱物件との同一性が証拠上不明確な場合に、窃取の事実を認定することが許されるか(証拠裁判主義の遵守)。
規範
犯罪事実の認定は証拠によらなければならない。窃盗罪においては、盗難にかかった被害品と、被告人が所持・処分等の取り扱いをした物件との間に厳格な同一性が認められることが、被告人を犯人と断定するための前提条件となる。
重要事実
Aが保管していた名古屋市内の株式会社所有(陸軍省払下げ)の原毛約12梱が盗難に遭った。一方で、被告人が原毛を取り扱った事実は認められたが、原判決が挙げた証拠(詳細は判決文からは不明)のみでは、盗まれた原毛と被告人が扱った原毛が同一のものであるかを確認できなかった。
あてはめ
原審が採用した証拠によれば、原毛の盗難事実と被告人の原毛取扱事実は認められる。しかし、両方の原毛が同一物であることを結びつける証拠が欠けている。この同一性が認められない以上、被告人が「判示の原毛」を窃取したという犯人性の認定は論理的に導き出せない。したがって、原判決の事実認定は客観的な証拠の裏付けを欠くものと言わざるを得ない。
結論
盗難品と被告人の取扱品の同一性が証拠により認められない以上、窃盗罪の成立を認めることはできず、原判決には証拠に基づかない事実認定の違法があるため破棄を免れない。
実務上の射程
刑事訴訟法317条(証拠裁判主義)の具体例として、特に盗品等の性質を有する罪において、物件の同一性の証明が犯人特定(犯人性)の不可欠な要素であることを示す。実務上、間接事実から犯人性を推認する際、前提となる「物」のつながりを厳格に画定させるための論拠として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)351 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、犯罪構成要件のすべてにわたって存在する必要はなく、自白と他の証拠を総合して犯行事実が認定できれば、犯人であることや共謀の事実は自白のみで認定しても憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪で起訴された事案において、第一審判決は被告人の公判廷における自白に基づき…