公判手続の更新手続を規定した刑訴規則第二一三条の二は憲法第三一条、第三七条第二項に違反しない。
刑訴規則第二一三条の二の合憲性。
憲法31条,憲法37条1項,憲法37条2項,刑訴規則213条,刑訴規則213条の2,刑訴法315条,刑訴法315条の2
判旨
公判手続の更新前に証人尋問の機会が十分に与えられていた場合、更新後の手続において当該証人の供述調書を証拠としても、憲法37条2項の証人審問権に違反しない。
問題の所在(論点)
公判手続の更新に際し、更新前の証人供述を録取した書面を証拠とすることが、被告人の証人審問権(憲法37条2項)および適正手続(憲法31条、37条1項)を侵害しないか。
規範
被告人は刑事訴訟法に基づき、公判手続の更新前において証人に対する審問の機会を十分に与えられている。したがって、更新後の手続において、規則(刑訴規則213条の2等)に基づき、更新前の被告人以外の者の供述を録取した書面を相当と認める方法で証拠調べに供したとしても、直ちに憲法37条2項(証人審問権)に違反するものではない。
重要事実
被告人(興信所経営者ら)に対する刑事事件において、第一審の公判手続中に裁判官の更迭等に伴う「公判手続の更新」が行われた。この更新に際し、更新前の公判期日において取り調べられた被告人以外の者の供述調書について、刑訴規則213条の2に従い、職権による証拠調べが行われた。被告人側は、更新後の公判において改めて直接審問する機会が保障されないことは、憲法31条、37条1項・2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における第一審の公判手続の更新は、刑事訴訟法および刑訴規則213条の2の規定に従って適法に行われている。被告人は、手続が更新される前の段階において、当該証人らに対して十分な審問の機会を与えられていた。このように、一度は対面・尋問の機会が実質的に保障されていた以上、その後の更新手続で書面を証拠として採用したとしても、証人審問権の本質的な侵害には当たらない。また、更新手続自体が法の規定を遵守して行われているため、憲法31条等の適正手続にも反しないと解される。
結論
本件の公判手続の更新および証拠調べは憲法37条2項、31条、37条1項に違反せず、上告は棄却される。
実務上の射程
公判更新時の証拠調べに関する憲法適合性を示した射程の広い判例。実務上、裁判官更迭時の更新手続における旧証拠の取り扱いの根拠となる。答案では、証人審問権の保障が「一度は与えられていたこと」を重視し、手続の適正性を肯定する論拠として活用する。
事件番号: 昭和30(あ)2354 / 裁判年月日: 昭和32年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、裁判所が証拠調べの必要性を認めた証人についてのみ喚問を要求するものであり、裁判所が合理的な裁量の範囲内で証人の取捨選択を行うことは同条に違反しない。 第1 事案の概要:刑事被告人の弁護人が、原審において計9名の証人尋問を申請したが、裁判所はその申請をすべて却下し、一人も審問する機…
事件番号: 昭和25(あ)3455 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は裁判所がその必要を認めた証人の尋問権を保障するものであり、被告人が申請した全ての証人の取り調べを義務付けるものではない。また、自白の補強証拠として共犯者の供述等が存在する場合には、憲法38条3項の自白のみによる処罰禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、特定…
事件番号: 昭和28(あ)536 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
所論は、第一審裁判所が被告人に対し、黙秘権を告げる前に、学校はどこまで行つたか等と尋問したこと、並びに証拠調に際し弁護人申請にかゝる証人からその取り調べを開始したことを捉え予断をもつて審理に当つたものであるから右は憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とはいえないというのであるが、一審裁判所の右措置が何等違法でない…