所論は、違憲をいうが、当庁で記録の謄写が許されなかつたことに対し不服を申立てるに過ぎず、原判決に対する攻撃とは認められないから上告適法の理由に当らない。 註、上告論旨は、被告人(弁護人なし)は上告趣意書を作成するため記録の謄写を求めたが許されなかつた。公判調書の閲覧だけでは上告趣意書の作成は不可能である。弁護人には謄写権を認めながら、被告人本人にはこれを認めないのは、実質上、上訴権を奪うことになるとして憲法一四条、三二条違反を主張した。
記録の謄写を上告審が許さなかつたことを不服とする上告理由の適否。
刑訴法40条,刑訴法49条,刑訴法405条
判旨
控訴審において被告人に弁論の機会を与えず、判決を下したとする主張について、記録上そのような事実が認められない場合には、憲法違反等の上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審において被告人に証人審問の機会や弁論の機会を与えないことが、憲法14条、32条、37条に違反し、適法な上告理由となるか。
規範
刑事訴訟法上、被告人の権利保護(審問の機会や弁論の機会)が適正に運用されているかは記録に基づき判断される。記録上、訴訟手続の違法や被告人の防御権侵害を裏付ける客観的な証跡が存しない限り、憲法14条、32条、37条等に違反するとの主張は前提を欠く。
重要事実
被告人が上告し、原審(控訴審)において証人尋問の機会が十分に与えられなかったこと、および刑事訴訟法388条に基づき被告人に弁論が許されなかったことが、憲法14条1項、32条等に違反すると主張した。また、最高裁判所での記録謄写の拒否や、選任請求のない弁護人の選任等についても不服を申し立てた。
あてはめ
記録を精査したところ、原審が被告人に対し証人への審問機会を十分に与えなかったと認めるべき証跡は存在しない。また、被告人の弁論を許さなかったという事跡も記録上認められない。さらに、弁護人の選任手続についても被告人の主張を裏付ける事跡はなく、最高裁での記録謄写拒否に関する不服も原判決に対する適法な攻撃とは認められない。したがって、いずれの主張も前提となる事実を欠いている。
結論
被告人の主張は前提を欠くか、あるいは単なる訴訟法違反・事実誤認の主張にすぎないため、適法な上告理由には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟手続の違憲・違法を主張する際は、客観的な訴訟記録(公判調書等)に基づく事実の裏付けが不可欠であることを示す。実務上、手続的保障の侵害を争う場合には、まずは記録上の不備や瑕疵を特定する必要があるという実証的判断の枠組みを提示している。
事件番号: 昭和53(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和54年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審裁判官が予断を抱いていたとの事実は認められず、憲法31条および37条1項に違反しない。また、原審が判断を示していない事項や事案を異にする判例の引用は、上告理由としての判例違反に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審裁判官が本件について予断を抱いたまま審理を進めたこと、および審理を尽…