判旨
上告趣意書において「控訴趣意書の記載を引用する」旨を記載しても、上告趣意書自体にその具体的な趣意内容が示されていない以上、上告の理由としては不適法である。
問題の所在(論点)
上告趣意書において、具体的な趣意内容を自ら記載することなく、控訴趣意書を引用する旨のみを記載する手法は、刑事訴訟法上の適法な上告理由の提示といえるか。
規範
刑事訴訟法に基づく上告趣意の提示においては、上告趣意書自体に具体的な理由(憲法違反、判例違反等)を明示しなければならない。書面自体に趣意内容を示さず、単に控訴趣意書を引用する手法は、適法な上告理由の提示とは認められない。
重要事実
被告人の弁護人が上告趣意書を提出したが、憲法違反を主張する部分の実質は事実誤認または単なる法令違反にすぎなかった。さらに、同書面の末尾において「以上の外は凡て控訴趣意書の記載を上告趣意として引用する」旨を記載し、詳細な趣意の記述を省略した。
あてはめ
弁護人が提出した書面の末尾にある「控訴趣意書を引用する」との記載は、上告趣意書という書面自体の中に具体的な趣意内容を何ら構成していない。上告審は書面審理を原則とする法制度(刑訴法405条等)であるところ、書面自体に理由が示されない引用形式は、上告理由を特定して裁判所の判断を求めるべき趣旨に反し、不適法な記載であると解される。
結論
本件上告は棄却される。引用による上告理由の提示は不適法であり、判断の対象とならない。
実務上の射程
上告趣意の個別具体性を要求する実務上の運用を裏付ける判例である。答案作成上は、形式的な引用が上告理由の具備を充たさない点に注意すべきである。なお、本判決は昭和37年の決定であり、現行の実務においても、上告趣意書には独立した具体的な理由記載が必須であることに変わりはない。
事件番号: 昭和26(れ)1738 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、憲法違反や刑事訴訟法411条等の上告理由の存否が争われた事案において、実質的に上告理由に当たらないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人側が、憲法違反(上告趣意第1点)および刑事訴訟法405条違反等(第2点・第3点)を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は憲法違反を…