判旨
関税逋脱罪における没収・追徴の対象となる「犯罪に係る貨物」とは、逋脱税額に相当する一部の貨物ではなく、不実の輸入申告等によって関税の全部又は一部が免脱された対象貨物の全部を指す。
問題の所在(論点)
関税の一部を逋脱した場合において、旧関税法83条に基づき没収(又は追徴)の対象となる「犯罪に係る貨物」の範囲は、逋脱額に相当する貨物部分に限定されるか、それとも輸入申告の対象となった貨物全部を指すか。
規範
旧関税法75条(現行110条1項)の関税逋脱罪の客体たる貨物、すなわち関税の全部又は一部が納付されるべきであるにもかかわらず逋脱された対象たる貨物は、その全部が同法83条(現行118条1項)にいう「犯罪に係る貨物」に当たる。これを逋脱税額に対応する貨物と、それ以外の貨物に分割して解釈することは許されない。
重要事実
被告人は、外国産の毛織物等(全長2,939メートル余、到着価格約816万円)を輸入する際、不実の低価輸入申告を行い、税関吏を誤信させて関税額を過少に査定させた。この手法により、本来納付すべき関税額との差額である79万4,030円を逋脱し、貨物の全部について輸入免許を得て引き取った。弁護人は、没収・追徴の対象は逋脱額に相当する貨物部分に限定されるべきだと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は輸入貨物の全部の価格について不実の申告を行い、その全部について本来よりも低額な関税の査定を受けて輸入免許を得ている。これは貨物の一部について関税を完納し、他の部分について全く納付しなかったという事案ではない。したがって、関税の逋脱行為は本件貨物の全部分にわたって行われたものといえるため、貨物のいずれの部分も「犯罪に係る貨物」に該当すると評価される。
結論
輸入貨物全部が「犯罪に係る貨物」に該当し、その全額について追徴を認めた原判決は相当である。上告棄却。
実務上の射程
関税法上の没収・追徴規定の適用範囲を画定した重要な判例である。答案上では、一部の免税や低価申告といった「一部の逋脱」がある場合でも、申告の単位となった貨物全体が客体となることを示す際に用いる。刑法の没収の一般的法理(犯行組成物)と平仄を合わせつつ、行政取締法規としての関税法の合目的的解釈を示す。
事件番号: 昭和34(あ)1860 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条の犯人には、同法第一一二条にいわゆる「運搬等」をした者を包含する。
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…