一 いわゆる差額関税の逋脱事件について関税法(昭和四二年法律第一一号による改正前のもの)一一八条二項の規定にしたがい輸入貨物全体の価格に相当する金額を追徴することは、憲法三六条、二九条、三一条に違反しない。 二 関税定率法(昭和四一年法律第三七号による改正前のもの)四条三項にいう「最近に輸入港に到着した」とは、当該輸入申告の時に最も近い日に輸入港に到着したことをいう。
一 いわゆる差額関税の逋脱事件について関税法(昭和四二年法律第一一号による改正前のもの)一一八条二項の規定にしたがい輸入貨物全体の価格に相当する金額を追徴することと憲法三六条、二九条、三一条 二 関税定率法(昭和四一年法律第三七号による改正前のもの)四条三項にいう「最近に輸入港に到着した」の意義
憲法29条,憲法31条,憲法36条,関税法(昭和42年法律11号による改正前のもの)118条2項,関税定率法(昭和41年法律37号による改正前のもの)4条3項
判旨
旧関税法118条による輸入貨物全体の価格相当額の必要的追徴は、逋脱税額に比して高額であっても、一般予防の必要性や情状を考慮すれば、直ちに憲法31条や36条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
旧関税法における輸入貨物の全額相当額の必要的追徴が、適正手続(憲法31条)、残虐な刑罰の禁止(36条)および財産権の侵害(29条)として違憲とならないか。特に、逋脱した税額に比して追徴額が著しく高額である場合の合憲性が問題となった。
規範
罪刑の均衡(憲法31条、36条)は、法定刑・宣告刑のみならず必要的没収・追徴といった付加刑においても要請される。もっとも、没収・追徴の対象額が不法利益の額を大きく上回る場合であっても、当該犯罪の情状や一般予防の必要性といった諸般の事情を総合考慮し、その刑罰が「極端な不均衡」に陥り「残虐な刑罰」に当たると評価されない限り、憲法には違反しない。
重要事実
被告人らは、輸入貨物の価格を低く申告して関税を逋脱した(差額関税の逋脱事件)。当時の旧関税法118条2項は、没収不能な場合に貨物全体の価格相当額を必ず追徴すると定めていた。第一審は、追徴額が逋脱税額に比してあまりに高額(非常識な結果)であり、憲法36条等の精神に照らし「超法規的刑罰阻却事由」があるとして追徴を科さなかったが、原審は追徴を命じた。
あてはめ
本件における追徴は、確かに逋脱税額との対比では高額であるが、被告人らの犯罪の情状は必ずしも軽微ではない。また、関税法が企図する一般予防の必要性を考慮すれば、単に逋脱税額と追徴額の数的対比のみをもって「極端な不均衡」があるとはいえない。また、法改正により必要的没収・追徴の範囲が限定された際にも、立法者が既存の事件への遡及適用をあえて否定した事情(附則等)も、正義と衡平の観点から尊重されるべきである。
結論
輸入貨物全体の価格相当額を追徴した原判決に違憲の点はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事法における罪刑均衡原則の限界を示す判例である。行政法的な側面を持つ刑罰(関税法等)において、不法利益の剥奪を超えた制裁的要素を含む必要的没収・追徴が、形式的に高額であっても直ちに違憲とはされない枠組みとして引用できる。ただし、団藤補足意見や藤崎反対意見が示すように、「極端な不均衡」がある場合には憲法31条・36条による制約がかかり得る点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)2304 / 裁判年月日: 昭和32年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を与える人道上残酷な内容の刑を指し、関税法に基づく追徴金はこれに該当せず、憲法13条にも違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いまだ入港していない山口県沖合の海域において、韓国船から貨物を積み替え、広島県内の海岸に陸揚げした。こ…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。