判旨
犯行当時被告人の所有に属していた犯罪貨物が、その後第三者に譲渡される等して事実上没収不能となった場合、当該第三者の善意・悪意を問わず、被告人に対して関税法上の追徴を科すことができる。
問題の所在(論点)
犯行当時に被告人の所有に属していた犯罪貨物が、その後に第三者の所有に帰し事実上没収不能となった場合において、関税法118条2項に基づく被告人からの追徴が許されるか。また、その際に第三者の善意・悪意が影響するか。
規範
関税法118条1項に規定する犯罪貨物が、犯行当時被告人の所有に属していた場合には、その後に当該貨物が第三者の所有に帰し、事実上没収不能となったときであっても、同条2項に基づき被告人からその価額を追徴することができる。この場合、没収対象物が第三者の手に渡っている以上、当該第三者の善意・悪意を問わず追徴は可能であり、被告人に対する追徴手続において当該第三者を訴訟参加させずとも違憲の問題は生じない。
重要事実
被告人らはスイス製腕時計等の密輸入を行った。当該犯罪貨物のうち一部(腕時計9個)を除き、他の腕時計(エニカ12個等)は、被告人が仕入先の時計商に返品したり、氏名不詳の第三者に売却したりしていた。原審は、裁判時に犯罪貨物が第三者の所有に属していることを理由に、第三者没収に関する憲法判断の判例を引用して、没収に代わる追徴を否定したため、検察官が上告した。
あてはめ
本件犯罪貨物は、犯行当時において被告人の所有に属していたと認められる。第三者没収が違憲とされるのは、被告人以外の第三者が権利を有する物を没収する場合にその告知・弁解の機会を与えない点にあるが、本件は「被告人に対する追徴」が問題であり、第三者の財産権を直接侵害するものではない。したがって、第三者が善意である場合はもちろん、仮に悪意であったとしても、既に貨物が事実上没収不能である以上、被告人に対してその価額を追徴することは適法である。第三者を訴訟手続に参加させる必要もない。
結論
被告人から犯罪貨物の価額を追徴することは可能である。第三者の所有に属することを理由に追徴を否定した原判決には、関税法118条2項の解釈適用を誤った違法がある。
実務上の射程
被告人自身の所有物であったものが処分された場合の追徴の可否を論じる際に用いる。第三者没収(刑法19条2項、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法)の議論と混同せず、追徴が被告人に対する個人的な金銭納付義務を課す処分であることを強調する際に有効である。
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…