関税法第一一八条第二項の規定により犯罪貨物等の価格に相当する金額を追徴するには、共同正犯者の個々に対しその全額を追徴する旨言渡しうるのであり、ただ犯人のいずれかが右追徴金の全部または一部を納付したときは、納付済の部分につき重ねて執行しえないというにすぎない
関税法第一一八条第二項の規定による追徴金を共同正犯者から全額追徴する言渡とその執行
関税法118条
判旨
他人と共謀して関税法違反の罪を犯した場合、没収に代わる追徴については、共犯者の一人に対して犯罪貨物の価格全額の追徴を言い渡すことができる。ただし、他の共犯者の納付があれば、その範囲で二重に徴収することは許されない。
問題の所在(論点)
数人が共謀して関税法違反の罪を犯した場合、没収することができない犯罪貨物の価格に相当する金額を、共犯者の一人に対してその全額分追徴することができるか。関税法118条2項の追徴の性質と共犯者間の負担関係が問題となる。
規範
共謀による関税法違反事件において、同法118条2項に基づき没収に代わる追徴を命ずる場合、犯罪貨物等の価格に相当する金額の全額を、各共犯者に対して個別に言い渡すことができる。この場合、共犯者のいずれかが追徴金の全部又は一部を納付したときは、その納付済みの限度において、他の共犯者からさらに徴収することはできない。
重要事実
被告人は、他人と共謀して関税法110条1項2号所定の罪(密輸等)を犯した。原審は、犯罪貨物の没収が不能であったため、関税法118条2項に基づき、共犯者の一人である被告人に対し、犯罪貨物の価格全額に相当する金額の追徴を言い渡した。これに対し弁護人は、収賄罪の追徴に関する判例を引用し、共犯者一人に全額の追徴を課すことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
関税法における追徴は、犯罪貨物の没収が不能な場合に、その不正な利益を剥奪し、あわせて制裁的機能を果たすものである。本件のような共謀共同正犯の場合、各共犯者は犯罪全体について責任を負うべき立場にある。したがって、収賄罪における賄賂の追徴(利益の分配に応じた個別追徴)とは異なり、関税法上の追徴については、各共犯者に対して当該貨物価格の全額を言い渡すことが可能である。もっとも、国による不当な二重利得を避けるため、誰か一人が納付すれば、その限度で他の共犯者に対する徴収権は消滅するという実質的な連帯関係が認められるべきである。
結論
共犯者の一人に対し犯罪貨物の価格全額の追徴を言い渡すことは適法である。上告棄却。
実務上の射程
関税法や薬物取締法等の「不正物品」の没収・追徴に関する事案に射程が及ぶ。収賄罪のように「受け取った賄賂」の額を各人に配分する個別追徴の原則(刑法197条の5)とは異なり、関税法等の追徴は共犯者全員に全額の追徴を科し得る(執行段階で調整する)という「全額追徴」の法理として位置づけられる。答案上は、追徴の対象が「利益」か「物品の代位」かによって、収賄罪の判例と使い分ける必要がある。
事件番号: 昭和32(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和35年12月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物についてはその犯罪が行われた当時における関税及び内国消費税込の国内卸売価格をいうものと解すべく、右国内卸売価格の内には、物の原価、関税、内国消費税の外更に通常の卸売取引における適正利潤を含む。