関税法(昭和二五年四月三〇日法律第一一七号による改正前のもの)第八三条第三項の規定による追徴は、同法第七六条の密輸出の幇助をした者に対しても、「犯罪ニ係ル貨物又ハ其ノ犯罪行為ノ用ニ供シタル船舶」の原価または価額に相当する金額の全額につき言渡すことができる。
関税法(昭和二五年四月三〇日法律第一一七号による改正前のもの)第八三条第三項の法意
関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)83条,関税法(昭和25年4月30日法律117号による改正前のもの)76条
判旨
関税法違反の共犯者に対する追徴は、密輸入等の取締を厳行する趣旨から、正犯・幇助犯を問わず全額を共同連帯して納付させるべきであり、一人の執行が完了すれば他者の執行は免れる。また、密輸当時に外国とみなされていた地域が後に日本に復帰しても、刑の廃止(刑訴法405条等)には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 関税法83条1項に基づく追徴金について、共犯(特に幇助犯)に対しても全額を共同連帯して負担させるべきか。 2. 密輸の対象地域が事後的に日本に復帰した場合、刑訴法上の「刑の廃止」に該当し、免訴事由となるか。
規範
1. 関税法上の追徴の性質について:犯罪に係る貨物の没収が不可能な場合に価格を追徴する趣旨は、違法な貨物やその対価が犯則者の手に残ることを禁止し、取締を厳行する点にある。したがって、共犯関係がある場合は、正犯・幇助犯の別を問わず、共同連帯の責任において価格全額を納付させるべきである。 2. 重複執行の制限について:共犯者それぞれに全額の追徴を言い渡しても、一人に対して全部の執行が了すれば、他の者に対しては重ねて執行することは許されない。 3. 法令改正と刑の廃止について:密輸当時に外国とみなされていた地域が後にわが国に復帰し外国とみなされなくなっても、それは事実関係の変化にすぎず、刑の廃止があったものとはいえない。
重要事実
被告人らは、当時「外国」とみなされていた地域との間で、免許を受けずに貨物を輸出入したとして関税法違反(密輸出入)に問われた。原審は、共犯者らに対し、関税法83条1項に基づき貨物の価格全額の追徴を命じた。これに対し被告人らは、幇助犯にすぎない者への全額追徴の不当性や、当該地域の日本復帰に伴う「刑の廃止」による免訴を主張して上告した。
あてはめ
1. 追徴の趣旨は犯則者の利得を剥奪し取締を徹底することにあるため、共犯者間での役割の軽重(正犯・幇助)にかかわらず、目的達成のためには全額の連帯納付を命じるのが至当である。一人に対する執行で目的は達せられるため、二重取りにはならず、被告人に酷とはいえない。 2. 地域指定の変更は、当該犯罪行為当時の違法性を左右するものではなく、法律そのものが改廃されたわけではないため、刑の廃止には当たらない。
結論
1. 幇助犯を含む共犯者全員に対し、共同連帯して価格全額の追徴を命じることは適法である。 2. 地域復帰後も刑の廃止には当たらず、免訴の言渡しをすることはできない。
実務上の射程
行政刑法における没収・追徴の連帯責任を認めた重要判例である。刑法上の没収・追徴が個別的な利得剥奪を原則とするのに対し、関税法等の取締法規では連帯納付(一人が払えば他は免れる関係)が認められる点に注意が必要。答案上は、追徴の趣旨から連帯責任の妥当性を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)3683 / 裁判年月日: 昭和30年12月8日 / 結論: 棄却
旧関税法第八三条の規定により同一の供用船舶又は犯則貨物に関し共同正犯たる各犯人に対しそれぞれの価額又は原価の全額を追徴する言渡をしても、かかる判決はその全員に対し重複してその全部につき執行することが許されるわけではなく、その中一人に対し全部の執行が了れば他のものに対しては執行し得ない。