旧関税法第八三条の規定により同一の供用船舶又は犯則貨物に関し共同正犯たる各犯人に対しそれぞれの価額又は原価の全額を追徴する言渡をしても、かかる判決はその全員に対し重複してその全部につき執行することが許されるわけではなく、その中一人に対し全部の執行が了れば他のものに対しては執行し得ない。
旧関税法第八三条の規定による追徴金を共同正犯たる各犯人からそれぞれ全額追徴する言渡とその執行
関税法(昭和29年法律61号による改正前)83条,刑法19条ノ2,刑訴法490条
判旨
共同正犯の全員に対し、同一物件について没収または追徴の言渡しをしても、一人に対して執行が完了すれば他者に対しては執行し得ないため、重複して執行されることはなく、二重処罰の禁止等に抵触しない。
問題の所在(論点)
数人の者が共同して犯罪を行った共同正犯の場合において、没収不能の際の追徴を各被告人に対して命じることができるか。また、その場合の執行の関係はどうあるべきか。
規範
共同正犯の場合、各犯人に対し同一物件に関して没収または追徴の言渡しをすることができる。ただし、かかる判決は、全員に対し重複してその全部につき執行することが許されるわけではなく、そのうち一人に対し全部の執行が了れば、他の者に対しては執行し得ないものと解すべきである。
重要事実
被告人らは共謀の上、関税法違反等の罪を犯した。原判決は、共同正犯の関係にある被告人らに対し、同一の物件に関しそれぞれにつき追徴金の言渡しを行った。これに対し被告人側は、かかる追徴の言渡しは追徴の立法精神に反し、二重の処罰を課すものであり憲法に違反するなどと主張して上告した。
あてはめ
関税法の規定に基づく追徴は、犯罪による不正な利益を剥奪する趣旨を含むが、共同正犯において全員に全額の追徴を命じたとしても、実務上の執行は一体として管理される。すなわち、一人の被告人が全額を納付した場合には、追徴の目的は達せられるため、他の被告人に対して重ねて執行することは許されない。したがって、被告人全員に全額の追徴を言い渡したとしても、実質的に二重の負担を強いるものではないため、憲法や法理に反するとはいえない。
結論
共同正犯の全員に対し、それぞれ全額の没収または追徴を言い渡すことができる。ただし、一人の被告人から全部の執行が完了したときは、他の被告人に対する執行は許されない。
実務上の射程
刑事実務において、共同正犯に対する没収・追徴の主文構成を基礎付ける重要判例である。答案上は、没収・追徴の性質(剥奪的・懲罰的)に触れつつ、重複執行を否定することで過剰な剥奪を回避する論理として用いる。
事件番号: 昭和30(あ)3445 / 裁判年月日: 昭和33年4月15日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項の規定により犯罪貨物等の価格に相当する金額を追徴するには、共同正犯者の個々に対しその全額を追徴する旨言渡しうるのであり、ただ犯人のいずれかが右追徴金の全部または一部を納付したときは、納付済の部分につき重ねて執行しえないというにすぎない