旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第一項は、憲法第二九条に違反しない。
旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第一項は憲法第二九条に違反するか。
旧関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)83条1項,憲法29条
判旨
共謀共同正犯が成立する場合、犯罪供用物等の没収については、被告人以外の共犯者が所有する物件であっても、適法に没収することができる。
問題の所在(論点)
数人の順次の共謀による共謀共同正犯が成立する場合において、特定の被告人以外の共犯者が所有する物件を、当該被告人に対して没収することができるか。
規範
順次の共謀による共謀共同正犯の成立を認めた上で、旧関税法83条1項(現行関税法118条1項参照)に基づく没収に関し、没収の対象が被告人以外の共犯者の所有に属するものであっても、当該被告人との間で共同正犯の成立が認められる限り、その被告人に対しても当該物件の没収を言い渡すことができる。
重要事実
被告人A、B、C、D、Eの5名は、共謀の上、貨物を不正に輸入する等の関税法違反の罪に問われた。第一審判決は、本件各貨物が被告人Aの所有物であることを認定した上で、その共犯者である被告人Bに対しても、旧関税法83条1項を適用し、当該貨物の没収を言い渡した。これに対し弁護人は、他人(共犯者A)の所有物である貨物を被告人Bから没収することはできないとして、憲法29条違反等を理由に上告した。
あてはめ
最高裁は、数人間の順次の共謀による共謀共同正犯の成立を肯定する。その上で、没収対象である本件各貨物が、共同正犯の一員である被告人Aの所有に属するものであることを証拠に基づき認定した。被告人BはAと共謀共同正犯の関係にあるため、自己の所有物でないとしても、共犯者の所有物であれば没収の要件を充足する。したがって、第一審判決がBに対しても没収を言い渡したことは正当である。
結論
共犯者の所有に属する物件については、他の共同正犯人に対しても没収を言い渡すことができるため、被告人Bに対する没収の言渡しは正当である。
実務上の射程
共犯事件における没収の告知対象を画定する際の根拠となる。共同正犯の一人が所有している物件であれば、他の共同正犯に対しても没収を科すことが可能であり、憲法29条(財産権)にも違反しない。ただし、第三者没収(共犯者以外の所有物)の場合には、別途適正手続(告知・弁解の機会)が必要となる点(最大判昭37.11.28参照)と区別して理解すべきである。
事件番号: 昭和29(あ)3683 / 裁判年月日: 昭和30年12月8日 / 結論: 棄却
旧関税法第八三条の規定により同一の供用船舶又は犯則貨物に関し共同正犯たる各犯人に対しそれぞれの価額又は原価の全額を追徴する言渡をしても、かかる判決はその全員に対し重複してその全部につき執行することが許されるわけではなく、その中一人に対し全部の執行が了れば他のものに対しては執行し得ない。