一 イ、関税逋脱事件につき税関長が懲役の刑に処するのを相当として、通告をすることなく告発したときは、判決が罰金刑であつたからといつて、右告発が遡つて不適法にはならない。 ロ、法人のために行為する者について、税関長が懲役の刑に処するのを相当として直接告発する場合においては、法人に対しても通告なしに告発することができる。 二 納税義務者でない者が納税義務者と共同して関税を逋脱したときは、関税補達の罪の共同正犯となる。
一 関税逋脱事件について通告を経ない告発が適法と認められた事例 二 納税義務者でない者につき関税逋脱の共同正犯が成立するか
旧関税法75条,旧関税法82条の3,旧関税法97条,刑法65条1項,刑法60条
判旨
刑法65条1項は真正身分犯のみならず不真正身分犯の共同正犯をも含む趣旨であり、関税逋脱犯のような身分犯であっても非身分者が共謀することで共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
関税逋脱犯のような身分犯において、身分を有しない者が共謀した場合に、刑法65条1項により共同正犯が成立するか。すなわち、同項の「共犯」に共同正犯が含まれるか、および不真正身分犯への適用があるかが問題となる。
規範
刑法65条1項は、身分によって構成される犯罪につき、身分のない者が共犯として関与した場合にその全般にわたって連帯性を認める趣旨である。したがって、真正身分犯に限らず、身分関係によって刑の軽重がある不真正身分犯であっても、同条1項により共同正犯の成立を認めることができる。
重要事実
被告人Aは、被告会社のために、納税義務者である米兵Bと共謀し、関税の逋脱(逋脱犯)を図った。弁護人は、逋脱犯が身分犯であることを理由に、非身分者である被告人Aには刑法65条1項を適用して共同正犯を認めることはできないと主張して上告した。
あてはめ
本件における納税義務者は米兵Bであり、関税逋脱犯は一定の身分を要する身分犯である。しかし、被告人Aは被告会社のためにBと共謀して便宜を図り、犯罪実行に加担している。刑法65条1項は身分犯への関与について広く共同正犯の成立を認める趣旨と解されるため、非身分者であるAについてもBとの共同正犯の成立を認めるのが正当である。
結論
身分犯であっても、刑法65条1項により非身分者に共同正犯が成立する。したがって、被告人Aに共同正犯の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
刑法65条の解釈において、1項が共同正犯を含むこと、および1項・2項の適用関係について「1項=連帯的作用(成立)」「2項=個別的作用(科刑)」と整理する判例理論の基礎となる。答案上は、身分犯への非身分者の関与が問題となる際に、1項により共同正犯の成立を導く根拠として活用する。
事件番号: 昭和30(あ)3445 / 裁判年月日: 昭和33年4月15日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項の規定により犯罪貨物等の価格に相当する金額を追徴するには、共同正犯者の個々に対しその全額を追徴する旨言渡しうるのであり、ただ犯人のいずれかが右追徴金の全部または一部を納付したときは、納付済の部分につき重ねて執行しえないというにすぎない