政府の免許を受けないで貨物を韓国へ密輸出しようと企て、門司市田の浦海上附近で韓国向けの韓国船に貨物を積み換える目的をもつて、宇品港で本邦船に貨物を積載、同港を出港、宇部港に寄港、同港を出港し、田の浦港に入港した際、門司市警察署員に検挙され、その目的を遂げなかつたときは、旧関税法第七六条第二項の密輸出未遂罪が成立する。
密輸出未遂罪の成立する事例
旧関税法76条2項,刑法43条本文
判旨
共犯者の1人が目的物を占有していれば、他の共犯者もその占有を共同していると認められる場合には、その全員に対して没収・追徴を科すことができる。
問題の所在(論点)
数人の共犯者が関与した犯罪において、没収または追徴の要件となる物件の「占有」を共犯者全員に認めることができるか。
規範
没収・追徴の対象となる物件の「占有」については、物理的・現実的な所持のみを指すのではなく、共犯関係にある者らが共同してその物件を支配・管理していると認められる場合には、共犯者全員にその占有を認めることができる。
重要事実
被告人Bは、他の共犯者らと共に銅インゴット等の密輸入および密輸出未遂に及んだ。第一審判決は、これらの物件が被告人Bを含む共犯者らの占有に属していたと認定し、旧関税法83条1項および3項に基づき、物件の没収およびその原価の追徴を命じた。これに対しBは、自身に現実の占有がなかった旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人Bは各密輸の共犯者の一人として行動しており、第一審が挙げた証拠を総合すれば、当該物件はBの占有にも属していたことが肯定できる。したがって、現実の直接的な所持が認められない場合であっても、共犯関係に基づき共同して物件を支配していた以上、Bに対しても没収および追徴を適用することが可能であると判断される。
結論
被告人Bにも物件の占有が認められるため、没収および追徴を是認した原判決は正当である。
実務上の射程
共犯事件における没収・追徴の帰属を判断する際の基準となる。物理的な所持にとらわれず、共犯者間での共同支配(共同占有)を認めることで、密輸組織等の構成員全員に対して制裁を科す実務上の運用を支える射程を持つ。
事件番号: 昭和30(あ)3445 / 裁判年月日: 昭和33年4月15日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項の規定により犯罪貨物等の価格に相当する金額を追徴するには、共同正犯者の個々に対しその全額を追徴する旨言渡しうるのであり、ただ犯人のいずれかが右追徴金の全部または一部を納付したときは、納付済の部分につき重ねて執行しえないというにすぎない
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。