一 密輸入品の故買または寄蔵をした各犯則者に対しても、関税法(昭和二七年法律第一九八号による改正前のもの)第八三条第三項所定の原価に相当する金額の全部につき追徴の言渡をすることができる。 二 右関税法第八三条第三項の規定により原価に相当する金額の全額を右犯則者全員に対し各追徴する旨の言渡があつても、その中一人に対し全部の執行が了れば、他の者に対しては執行することができない。
一 関税法(昭和二七年法律第一九八号による改正前のもの)第八三条第三項の法意 二 右関税法第八三条第三項の規定により追徴金を右犯則者全員からそれぞれ全額追徴する旨の言渡とその執行
関税法(昭和27年法律198号による改正前のもの)83条,関税法(昭和27年法律198号による改正前のもの)76条ノ2
判旨
関税法上の追徴は、単なる不正利益の剥奪に留まらず、密輸入の取締を厳に励行する趣旨に基づくため、共犯者間では追徴すべき価格全額について連帯責任を負う。したがって、密輸入品の故買や寄蔵を行った複数の犯人に対し、それぞれ物件の全額を追徴することができるが、一人が全額を納付すれば他者への執行は許されない。
問題の所在(論点)
関税法118条(旧83条3項)に基づく追徴において、複数の犯人が関与している場合、各犯人が負うべき追徴金の範囲(分担額か全額か)およびその法的性質が問題となる。
規範
関税法に基づく没収・追徴の趣旨は、単に犯人の手にある不正利益を剥奪するだけでなく、密輸入物件の存在自体を禁止し、密輸入の取締を厳に励行することにある。そのため、共犯者がある場合には、追徴すべき価格について各自が共同連帯の責任において全額を納付すべき義務を負う。ただし、二重の利得を認める趣旨ではないため、一人の犯人に対し全額の執行が完了すれば、他の犯人に対しては重ねて執行することはできない。
重要事実
被告人A、B、Cは、輸入物件である薬莢類約40トンが密輸入品であることを知りながら、共同してこれを故買または寄蔵した。原審は、被告人らに対し、関税法に基づき当該物件の価格相当額全額をそれぞれ追徴する旨の判決を下した。これに対し被告人らは、共犯者がいる場合に各自に全額の納付義務を課すことは、不正利益の剥奪という追徴の性質に反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件における薬莢類約40トンの故買・寄蔵行為は、密輸入の取締を徹底すべき関税法の規制対象となる「犯人」の行為に該当する。追徴の性質について、本判決は単なる利得剥奪にとどまらない制裁的側面を重視する。この趣旨を貫徹するためには、各被告人が対象物件の全額について責任を負う必要があると判断される。被告人A、B、Cのいずれもが、同一の密輸入品に関与している以上、各自に対して物件価格の全額を追徴することが相当である。もっとも、実質的な二重徴収を避けるため、誰か一人が全額を支払えば他の者の義務は消滅するという連帯債務的な運用によって調整が図られる。
結論
密輸入品の故買または寄蔵をした複数の犯人に対し、関税法に基づき、それぞれに物件価格全額の追徴を命じることができる。
実務上の射程
共犯事件における追徴の範囲を決定する際のリーディングケースである。刑法上の収賄罪における追徴(実質的な利得の剥奪を主眼とするため、原則として個別・按分計算)とは異なり、関税法や覚醒剤取締法などの行政刑法規においては、取締の徹底という目的から「連帯追徴」が認められるという判例の準則を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和35年12月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物についてはその犯罪が行われた当時における関税及び内国消費税込の国内卸売価格をいうものと解すべく、右国内卸売価格の内には、物の原価、関税、内国消費税の外更に通常の卸売取引における適正利潤を含む。
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。