判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を与える人道上残酷な内容の刑を指し、関税法に基づく追徴金はこれに該当せず、憲法13条にも違反しない。
問題の所在(論点)
関税法に基づく追徴が、憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当するか、また憲法13条(個人の尊重・公共の福祉)に違反するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を与えることを内容とする人道上残酷と認められる刑を意味する。また、行政上の目的達成のために科される追徴は、個人の尊厳や公共の福祉を定めた憲法13条に違反するものではない。
重要事実
被告人は、いまだ入港していない山口県沖合の海域において、韓国船から貨物を積み替え、広島県内の海岸に陸揚げした。この行為について旧関税法違反が問われ、同法83条3項に基づき、貨物の没収に代わる追徴金が科された。これに対し被告人側は、当該追徴が憲法13条および36条に違反する過酷な刑罰であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、残虐な刑罰の定義を「不必要な精神的肉体的苦痛を与える人道上残酷な刑」に限定した上で、本件の追徴金はこの定義に当たらないと判示した。また、過去の判例(最大判昭23.3.12等)を引用し、関税法上の追徴という制度が、適正な関税徴収や秩序維持という目的との関係で、公共の福祉に資する正当な制裁であることを示唆し、憲法13条違反を否定した。さらに、沖合での積替えと陸揚げという態様は、通常の入港後の陸揚げとは異なる悪質な脱税行為の一環と評価される。
結論
関税法に基づく追徴は、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当せず、憲法13条にも違反しない。したがって、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
刑事罰としての追徴や没収の合憲性を論じる際の基礎となる判例。特に「残虐な刑罰」の定義については、死刑制度やその他の身体刑の合憲性を検討する際のリーディングケース(最大判昭23.6.23)を維持・適用したものとして、答案上の規範として定着している。
事件番号: 昭和27(あ)6517 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度自体は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に該当せず、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し死刑を言い渡した下級審の判決に対し、弁護人が死刑は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に当たり憲法違反であると主張して上告した事案である。判決文中に具体的な犯罪事実は記載されていない。 第2 問…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。