一 関税法第一一八条において、犯罪に係る貨物を没収し、または、これを没収することができない場合にその没収することができないものの犯罪が行われた時の価格に相当する金額を犯人から追徴する趣旨は、単に犯人が現実に取得した不正の利益だけを剥奪せんとするに過ぎないのではなく、むしろ、国家が関税法規に違反して輸入した貨物またはこれに代るべき価格を犯人連帯の責任において納付せしめ、もつて密輸入の取締を厳に励行せんとするに出たものと解すべきである。 二 同条第二項は憲法第二九条に違反せず、また、同第三六条にいわゆる残虐な刑罰規定ともいえない。
一 関税法第一一八条の没収および追徴規定の趣旨 二 同条第二項の追徴規定と憲法第二九条および第三六条
関税法118条,憲法29条,憲法36条
判旨
関税法118条1項及び2項による没収・追徴の趣旨は、単に犯人が得た不正利益の剥奪にとどまらず、密輸入の取締を厳行するため、輸入貨物またはその価格を連帯責任において納付させる点にある。したがって、同条項は憲法29条や36条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 関税法118条に基づく没収・追徴の法的性質および趣旨は、不正利益の剥奪に限定されるか。 2. 犯人に対して貨物価格相当額の納付を命じる追徴規定は、憲法29条(財産権)や憲法36条(残虐な刑罰)に違反するか。
規範
関税法118条が、犯罪に係る貨物を没収し、または没収不能な場合に犯罪時の価格相当額を追徴する趣旨は、単に犯人が現実に取得した不正利益を剥奪するだけでなく、国家が関税法規に違反して輸入された貨物またはこれに代わるべき価格を犯人連帯の責任において納付させ、密輸入の取締を厳に励行する点にある。このような取締上の必要性に基づく規定は、公共の福祉を維持するための正当な制限であり、憲法29条(財産権)や36条(残虐な刑罰の禁止)に違反しない。
重要事実
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。
被告人は、関税を逋脱(密輸入)した貨物であることの情を知りながら、ウイスキー等を買い受けた。第一審および原審は、この行為を単独の犯罪事実として認定し、関税法118条2項に基づき追徴を命じた。これに対し弁護人は、追徴規定が不正利益の剥奪を超えて連帯責任を負わせるものである点や、憲法29条および36条に違反する点などを理由に上告した。
あてはめ
関税法118条の趣旨は、密輸入取締の徹底という公共の福祉の観点から、犯人に対して違反貨物の価値を連帯して納付させる責任を課すことにある。本件において、被告人は密輸品であると知りながら買い受けており、同条の適用対象となる犯人に該当する。この場合、現実に得た利益の多寡にかかわらず、密輸入された貨物の価格相当額を追徴することは、取締上の必要性から合理的な範囲内といえる。したがって、財産権の不当な侵害(29条違反)や、残虐な刑罰(36条違反)には当たらない。
結論
関税法118条2項による追徴は、公共の福祉に基づく合理的な制裁であり、憲法29条および36条に違反しない。
実務上の射程
行政刑法的な性質を持つ没収・追徴において、その目的が単なる利得剥奪(刑法19条等の原則)を超え、取締の実行性を担保するための連帯的な制裁(懲罰的性質)を含むことを認めた射程を有する。被告人が関税逋脱の情を知って買い受けた以上、単独犯であっても同条の責任を負うべきという判断基準を示している。
事件番号: 昭和35(あ)1701 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: その他
一 関税法第一一二条の犯罪貨物が甲より乙に譲渡され乙に対し没収の言渡があつた場合、同法第一一八条第二項により甲に対して没収に代わる追徴を言い渡すことは許されない。 二 右の場合、刑法第一九条第一項第四号、第一九条ノ二により甲に対して犯罪貨物の対価の没収またはこれに代わる追徴を言い渡すことができる。
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…