一 関税法第一一二条の犯罪貨物が甲より乙に譲渡され乙に対し没収の言渡があつた場合、同法第一一八条第二項により甲に対して没収に代わる追徴を言い渡すことは許されない。 二 右の場合、刑法第一九条第一項第四号、第一九条ノ二により甲に対して犯罪貨物の対価の没収またはこれに代わる追徴を言い渡すことができる。
一 関税法第一一二条の犯罪貨物が甲より乙に譲渡され乙に対し没収の言渡があつた場合甲に対して没収に代わる追徴を言い渡すことが許されるか。 二 右の場合甲に対してその対価の没収またはこれに代わる追徴を言い渡すことが許されるか。
関税法118条2項,関税法112条,刑法19条第1項4号,刑法19条ノ2
判旨
関税法118条1項により犯罪に係る貨物が他の共同被告人等から没収される場合には、同条2項の「没収することができない」場合には当たらず、重ねて追徴することはできないが、譲渡による対価(代金)については刑法19条の2に基づき別途追徴が可能である。
問題の所在(論点)
関税法上の犯罪に係る貨物が他の者(共犯者や情を知る譲受人)から没収される場合において、当該貨物を譲渡した者に対し、さらに関税法118条2項に基づく「価格」の追徴を重ねて行うことができるか。また、譲渡によって得た「対価(代金)」の追徴の可否が問題となる。
規範
関税法118条2項にいう「これを没収することができない場合」とは、犯人が当該物件を消費、紛失、又は善意の第三者に譲渡したこと等により、物理的・法律的に没収が不能となった場合を指す。共犯者や情を知る譲受人から当該物件が没収されるときは、依然として没収が実行されているため、同条項に基づく追徴は許されない。もっとも、犯罪行為によって得た物の「対価」として得た金銭については、特定性を欠き没収できない場合に該当する限り、刑法19条1項4号及び19条の2に基づき追徴することができる。
重要事実
被告人は、関税逋脱品であると知りながら外国製腕時計77個を有償取得した。その後、被告人はそのうち67個を含む計139個の時計を、同じく事情を知るAに対して売却した。原審は、Aに対して当該時計の没収を言い渡す一方で、被告人に対しても関税法118条2項を適用し、時計の価格相当額(36万600円)の追徴を命じていた。
あてはめ
本件において、問題の腕時計はAが情を知って取得したものであり、実際に原審においてAから没収の言渡しがなされている。したがって、関税法118条2項にいう「没収することができない場合」には該当せず、同条項を根拠に被告人から時計の価格相当額を追徴することは法の解釈を誤った違法がある。一方で、被告人がAに時計を売却して得た代金(19万1100円)は、犯罪行為によって得た物の対価(刑法19条1項4号)にあたる。この代金は特定された金銭ではなく現物没収が不能であるため、刑法19条の2に基づき追徴をすべきである。
結論
関税法118条2項による追徴は認められないが、刑法19条の2に基づき、譲渡対価である金銭を追徴することは可能である。原判決を破棄し、被告人を罰金刑に処するとともに、売却代金相当額を追徴する。
実務上の射程
没収・追徴の二重取りを禁止する原則(関税法上の特則適用場面)を示す。答案上では、関税法118条2項が「現物没収の代替的性質」を持つことを意識し、現物が没収されている場合は同条項の追徴は不可、譲渡対価については刑法の一般原則に従い追徴可能、という切り分けを行う際に有用である。
事件番号: 昭和35(あ)1772 / 裁判年月日: 昭和38年12月4日 / 結論: 破棄差戻
一 上訴審が、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法施行前、第三者に告知聴問の機会を与えることなくその所有物を没収した第一審判決を破棄する場合、同法施行後においては、当該事件を第一審に差し戻して、同法所定の手続を履践させるのが相当である。 二 関税法第一一八情の犯罪貨物が数人の犯人の間に転々譲渡された…