原判決が本件犯罪貨物中被告人以外の悪意の買受人、あつせん者、保管者らが略式命令、通告処分等によつて、当該犯罪貨物物の没収ないし没収に代わる追徴を命ぜられ、それを履行したと認められるものについては、被告人に対し関税法の規定に基づき重ねてこれについて没収ないし追徴をすべて筋合ではないとして、関税法第一一八条第二項による追徴が許されないとした分につき、刑法第一九条第一項第四号、第一九条の二を適用して、その譲渡代金相当額の追徴を言渡したのは正当である(昭和三五年(あ)一七〇一号同三六年一二月一四日第一小法廷判決、刑集一五巻一一号一八四五頁参照)。
関税法第一一八条の適用されるべき犯則行為に対する追徴没収に関して刑法第一九条、第一九条の二を適用することの当否。
関税法112条1項,関税法118条1項2号,関税法118条2項,刑法19条1項4号,刑法19条の2
判旨
関税法118条2項による追徴が許されない場合であっても、刑法19条1項4号及び19条の2の規定に基づき、犯罪貨物の譲渡代金相当額を追徴することは可能である。
問題の所在(論点)
関税法上の追徴規定(特別法)が適用されない場面において、刑法19条1項4号および19条の2(一般法)を根拠として犯罪貨物の譲渡代金相当額を追徴することの可否。
規範
関税法等の特別法に定める追徴規定が、没収不能等の理由により適用できない場合であっても、刑法19条1項4号(犯罪行為によって得た報酬としての対価)及び19条の2(没収不能時の追徴)の要件を満たす限り、一般法である刑法の規定を適用して追徴することができる。
重要事実
被告人は、本件犯罪貨物(関税法違反に係る物品)を譲渡したが、原判決は判示の理由により関税法118条2項による追徴を認めなかった。一方で、原判決は当該貨物の譲渡代金相当額について、刑法19条1項4号及び19条の2を適用して追徴を言い渡した。これに対し弁護人が、追徴の法令違反等を理由に上告した事案である。
あてはめ
本件における犯罪貨物は、その性質上、犯罪行為によって得られた物といえる。関税法118条2項が適用できない事情があるとしても、当該貨物を譲渡して得た代金は「犯罪行為の報酬として得た物」(刑法19条1項4号)に該当する。したがって、その現物が没収できない以上、刑法19条の2に基づきその価額を追徴することが法的に正当化される。
結論
関税法による追徴が認められない場合でも、刑法19条1項4号及び19条の2を適用して譲渡代金相当額を追徴した原判決は正当である。
実務上の射程
特別法に追徴規定がある場合でも、それが適用できない際の補充的規定として刑法総則の没収・追徴規定が機能することを示している。答案上は、没収・追徴の可否を論じる際、特別法(関税法や覚醒剤取締法等)の要件を検討し、それが否定される場合でも刑法19条・19条の2の適用の有無を検討する流れで活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)2993 / 裁判年月日: 昭和37年6月19日 / 結論: 棄却
一 所論(検察官)指摘の原判決の判断が、引用にかかる判例と相反するものであることは所論のとおりである。しかし、右判例の見解は当裁判所の採らないところであつて、これを変更して原判決を維持するのを相当と認める。 二 (検察官の上告趣意の要旨)原判決(註、昭和三六年一一月一三日東京高等裁判所第五刑事部)の追徴に関する判断中、…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和42(あ)346 / 裁判年月日: 昭和42年10月12日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項に違反して輸出された犯罪貨物に関し、同法第一一八条第二項に定める「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、その犯罪が行なわれた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、右価格中には内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれるものと解するのを相当と…