一 所論(検察官)指摘の原判決の判断が、引用にかかる判例と相反するものであることは所論のとおりである。しかし、右判例の見解は当裁判所の採らないところであつて、これを変更して原判決を維持するのを相当と認める。 二 (検察官の上告趣意の要旨)原判決(註、昭和三六年一一月一三日東京高等裁判所第五刑事部)の追徴に関する判断中、関税法違反の犯罪貨物が数人の犯人の間に順次譲渡又は移転された場合に、既にその犯人の一人から税関の通告処分に基づき、没収すべき犯罪貨物に該当する物件又はその没収に代る追徴金に相当する金額のいずれかが税関に納付されて国庫に帰属した後は、他の関係犯人に対し重ねて右没収代る追徴金の言渡をすることは許されないとする旨の部分は昭和三五年六月二九日東京高等裁判所第七刑事部の判決の追徴に関する判断(註、犯罪貨物が順次他の者に売買譲渡されたときは、各被告人からその価額を追徴すべきである)と相反するものである。
関税法第一一八条にいう犯罪貨物が関係犯則者の一人から通告処分により没収され国庫に帰属した場合と他の関係犯則者に対する没収または追徴。
関税法118条
判旨
旧刑法19条の2に基づく追徴の言渡しは裁判所の裁量に属し、これを科さないことが直ちに違法となるものではない。また、追徴を科さない判断が著しく正義に反すると認められない限り、上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
没収すべき物の全部または一部を没収することができない場合に、刑法19条の2(現行19条の2)に基づく追徴を科すか否かは裁判所の裁量に属するか。また、追徴を科さないことが上告理由(刑訴法405条)に該当するか。
規範
刑法19条の2(現行19条の2参照)に基づく追徴は、没収することができない場合にその価額を徴収するものであるが、その言渡しは裁判所の裁量的判断に委ねられている。したがって、追徴を科さないことが当然に判例違反や法令違反を構成するものではなく、追徴を科さない量刑判断が著しく不当であり、かつ著しく正義に反すると認められる特段の事情がない限り、適法とされる。
重要事実
被告人らに対し、第一審または控訴審において追徴の言渡しがなされなかった事案である。検察官は、没収不能な場合に追徴を科すべきであるとした従前の判例に違反するとして、刑法19条の2を適用して追徴を言い渡すべきであると主張し、上告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、従前の判例を変更し、追徴を科すか否かは裁判所の裁量事項であるとの見解を示した。本件において、原審が追徴を科さなかった判断について検討するに、追徴を言い渡さなかったことが刑の量定として甚だしく不当であり、著しく正義に反するとまでは認められない。したがって、適法な裁量の範囲内における判断として維持されるべきである。
結論
本件上告は棄却される。追徴の言渡しは裁判所の裁量に属し、本件で追徴を科さないことが著しく正義に反するとは認められないため、適法である。
実務上の射程
追徴の裁量性を認めた重要判例であり、実務上、没収・追徴の要否が争点となる事案での規範として活用できる。答案上は、没収不能時の追徴を検討する際、「追徴は裁判所の裁量に属する(刑法19条の2)」とした上で、当該事案における追徴の必要性や相当性を具体的事実(利得の大きさや性質等)から論じ、その裁量権の行使が正当であるかを検討する際の下敷きとなる。
事件番号: 昭和25(あ)3475 / 裁判年月日: 昭和37年12月19日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】被告人以外の第三者が所有する物件を、その所有者に告知・弁解・防禦の機会を与えることなく没収することは、憲法31条・29条に違反する。また、そのような違憲な没収が許されない場合には、没収に代わる追徴を命ずることも認められない。 第1 事案の概要:被告人は関税法違反等の罪に問われ、第一審において、被告…
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。