特別法たる関税法は伊藤弁護人の所論の点について刑法一九条、同一九条の二に優先して適用せられるから、所論は採用できない。次に関税法八三条にいう原価とは犯行当時における価格を指すものと解するを相当する。されば論旨は採用できない。
一 沒収、追徴に関する関税法八三条と刑法第一九条、第一九条ノ二との関係 二 関税法第八三条第三項という「物ノ原価」の意義
関税法83条1項,関税法83条2項,関税法83条3項,刑法19条,刑法19条ノ2
判旨
関税法(昭和29年法律第61号による改正前のもの)における没収・追徴の基準となる「原価」とは、犯行当時における価格を指すと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 関税法違反の罪における没収・追徴の基準となる「原価」とは、どの時点の価格を指すか。 2. 関税法の規定は、没収・追徴に関して刑法総則の規定に優先して適用されるか。
規範
関税法(本件適用法)における「原価」とは、価格の算定時期を特定する概念であり、その基準時は原則として犯行当時における価格を指すと解すべきである。
重要事実
被告人が関税法違反の罪に問われた事案において、第一審及び控訴審は被告人に対し有罪判決を下した。弁護人は、関税法上の「原価」の解釈や、特別法である関税法と刑法19条・19条の2(没収・追徴)の関係について上告し、原判決の法令解釈の誤りを主張した。
あてはめ
1. 関税法83条(当時)に規定される「原価」の意義について検討するに、処罰の公平性と違反行為の客観的価値を捉える観点からは、行為時の価格を基準とすべきである。したがって、本件における「原価」は犯行当時における価格を指すと評価される。 2. また、関税法は特別法であるから、没収・追徴の要件及び対象について、一般法である刑法19条及び19条の2に優先して適用されるものと解される。
結論
関税法上の「原価」は犯行当時の価格を指し、また関税法の規定は刑法総則に優先して適用される。したがって、原判決に法令の解釈誤りはない。
実務上の射程
特別法に独自の没収・追徴規定がある場合、刑法総則に優先して適用されるという特別法優先の原則を確認した点に意義がある。また「原価」という文言の基準時を「犯行当時」と解する判断は、他の行政刑罰における価額算定の基準時を検討する際にも参考となる。
事件番号: 昭和35(あ)970 / 裁判年月日: 昭和36年3月23日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項にいう「犯罪が行われた時」とは、同条第一項に規定する各罪につき当該犯罪が行われた時と解すべきである。
事件番号: 昭和31(あ)3437 / 裁判年月日: 昭和33年3月13日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条第二項は憲法第二九条に違反しない。