関税法第一一二条第一項に規定する同法第一一〇条第一項の犯罪にかかる貨物について、これを情を知つて有償で取得する等の罪は、その故買者においてその物が同条項の罪に係る貨物であることの認識があれば足り、同条項第一号と第二号のいずれに該当する行為に係る貨物であるかの事実までも知る必要はない(昭和二八年(あ)第三五七一号、同三〇年九月一六日最高裁判所第二小法廷判決参照)。
関税賍物故買罪の成立に必要な賍物に対する認識の程度。
関税法112条1項,関税法110条1項
判旨
関税法112条1項に規定する密輸品等の有償取得罪が成立するためには、当該貨物が同法110条1項の罪に係るものであることの認識があれば足り、具体的な脱税等の手口を認識している必要はない。
問題の所在(論点)
関税法112条1項の密輸品等の有償取得罪において、構成要件的故意の内容として、前提となる密輸犯罪の具体的な態様(同法110条1項各号の別)までを認識している必要があるか。
規範
密輸品等の有償取得罪(関税法112条1項、110条1項)における「情を知って」とは、その物が密輸等によって輸入された貨物であることの認識があれば足りる。したがって、その貨物が具体的に同法110条1項1号(無許可輸入等)に該当するか、あるいは2号(不正な税額等による輸入)に該当するかという、犯罪の具体的態様に係る事実までを認識している必要はない。
重要事実
被告人らは、関税法110条1項の罪(密輸等)に係る貨物である時計を、情を知って有償で取得したとして起訴された。弁護人は、第一審判決の事実摘示において、当該貨物が110条1項の1号と2号のいずれに該当する行為に係るものであるかの明示を欠いているとして、憲法31条(適正手続)違反等を主張して上告した。
あてはめ
本罪は密輸品等の流通を防止し、間接的に関税制度を保護する趣旨である。本件被告人において、有償で取得した貨物が「関税法110条1項の罪に係る貨物であること」の認識があれば、同法の禁ずる違法な貨物であることの認識として十分である。各号のいずれに該当するかという詳細な法的評価や具体的事実は、故意の対象には含まれないと解される。したがって、第一審判決が各号の別を明示していなくとも、故意を認めるに足りる事実摘示として必要十分である。
結論
密輸品等の有償取得罪の成立には、対象物が密輸品であることの認識で足り、具体的な密輸の態様まで知る必要はない。よって、本件の事実摘示に不備はなく、被告人の有罪は維持される。
実務上の射程
故意の抽象化・概括的認識に関する判例であり、盗品等関与罪における「盗品であることの認識」と同様の論理を関税法上でも認めたものといえる。答案上は、前提犯罪の具体的特定が困難な事案における故意の認定や、事実摘示の程度が問題となる場面で活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)193 / 裁判年月日: 昭和34年12月4日 / 結論: 棄却
関税未納の貨物であることを認識しながら、関税を納付しないでこれを輸入する意思がある以上、関税納付の告知を受けたことの認識がなくても、関税法第一一〇条第一項第二号違反の罪が成立する。