一 関税法一〇九条一項、一一〇条一項及び一一一条一項の罪に係る貨物は、情を知らない第三者により取得されたのちにおいても、なお同法一一二条の罪の客体たる性質を失わない。 二 関税法一〇九条一項、一一〇条一項及び一一一条一項の罪の犯人に対する公訴時効の完成は、同法一一二条の罪の成立に影響を及ぼさない。
一 密輸貨物に関する善意の取得者の介在と関税賍物罪の成否 二 密輸の本犯に対する公訴時効の完成と関税賍物罪の成否
関税法109条,関税法110条,関税法111条,関税法112条
判旨
関税法112条(密輸品運搬罪等)の客体は、情を知らない者が介在してもその性質を失わず、また本犯の公訴時効が完成しても同罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
関税法112条の罪に関し、①密輸品等が「情を知らない者」を介在した場合に客体性を喪失するか、②本犯の公訴時効完成が本罪の成立に影響を及ぼすか。
規範
関税法112条の罪は、通関・徴税秩序の保持を目的とし、密輸出入(同法109条、110条、111条)を助長・庇護する行為を処罰するものである。したがって、当該犯罪に係る貨物は、情を知らない者が一度取得したとしても客体たる性質を失わない。また、本犯の処罰自体を目的とするものではないため、本犯の公訴時効の完成は、112条の罪の成立を左右しない。
重要事実
被告人が、関税法違反(密輸出入等)の罪に係る貨物について、同法112条(密輸品等の運搬・保管・有償取得等)の罪に問われた事案。弁護側は、当該貨物が一度情を知らない者の手に渡ったこと、および本犯(密輸出入等の実行行為者)の公訴時効がすでに完成していることを理由に、本罪は成立しないと主張した。
あてはめ
①本罪は通関等の秩序維持を目的とするため、貨物自体に付着した「密輸品」という属性は、善意者の介在という偶然の事情で消滅するものではない。②本罪は本犯を助長・庇護する行為自体を独立して処罰する趣旨であるから、本犯が時効により処罰不能となったとしても、当該貨物を取り扱う行為の違法性は阻害されないと解される。
結論
貨物が情を知らない者により取得されたことがあっても、関税法112条の罪の客体たる性質を失わず、また本犯の公訴時効が完成していても同罪は成立する。
実務上の射程
盗品等関与罪(刑法256条)との対比で重要。本罪は「通関秩序」という行政目的の側面が強いため、本犯との関係がより独立しており、贓物性の承継や本犯の処罰可能性に関する解釈において、刑法上の議論よりも成立範囲を広く認める傾向にある。
事件番号: 昭和34(あ)1860 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
関税法第一一八条の犯人には、同法第一一二条にいわゆる「運搬等」をした者を包含する。