関税未納の貨物であることを認識しながら、関税を納付しないでこれを輸入する意思がある以上、関税納付の告知を受けたことの認識がなくても、関税法第一一〇条第一項第二号違反の罪が成立する。
関税法第一一〇条第一項第二号違反罪の成立と関税納付の告知を受けたことの認識の要否。
関税法110条1項2号
判旨
関税法110条1項2号の脱税罪の成立には、関税未納の貨物であることの認識と、関税を納付せず輸入する意思があれば足り、関税納付の告知を受けたことの認識までは不要である。
問題の所在(論点)
関税法110条1項2号違反の罪(関税を免れようとする罪)の成立において、関税未納の貨物であることの認識のほかに、「関税納付の告知を受けたことの認識」が必要か。いわゆる脱税罪における故意の対象が問題となる。
規範
関税法110条1項2号の罪が成立するためには、主観的要件として、当該貨物が関税未納であることを認識した上で、関税を納付せずこれを輸入する意思(故意)を有していれば足りる。関税納付の告知を受けた事実の認識は、同罪の成立要件には含まれない。
重要事実
被告人Aは、本件貨物が関税未納であることを認識しながら、関税を納付せずにこれを輸入する意思をもって輸入行為に及んだ。弁護側は、被告人が関税納付の告知を受けたことの認識を欠いていたため、故意が認められず同罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
被告人Aは、本件貨物が関税未納であることを認識していた。その上で、関税を納付せずに輸入する意思を有していたことが認められる。告知の認識は構成要件的故意の対象ではないため、客観的に告知の事実があるか否か(またはその認識の有無)は、同条の罪の成否を左右しない。したがって、脱税の故意は十分に認められる。
結論
被告人に脱税の故意が認められ、関税法110条1項2号違反の罪が成立する。告知の認識を欠くことを理由に故意を否定した主張は採用できない。
実務上の射程
行政上の手続や告知が犯罪成立の前提となっている場合であっても、それが故意の対象(構成要件的事実)に含まれるか否かを区別する際の指針となる。実務上、脱税罪において『告知』等の行政処分が介在する場合でも、基本的には『未納の認識と免脱の意思』という実質的要素で故意を判断すべきであることを示したものといえる。
事件番号: 昭和31(あ)1754 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
本件廻航が所論のごとく関税法二条一号にいわゆる引き取りの準備行為であつて、その着手とすることができず、従つて、原判決の同条号の解釈、適用が誤つているとしても、関税法一一一条二項によれば密輸入の予備をした者は密輸入の実行に着手してこれを遂げない者と同じく同条一項の例によるものであるから、右の違法は判決に影響を及ぼすべき法…
事件番号: 昭和38(あ)2391 / 裁判年月日: 昭和39年2月20日 / 結論: 棄却
学童給食用輸入脱脂ミルク横流しの関税法違反の犯罪の成立に必要な犯意の内容は、学童給食用の輸入脱脂ミルクが法令上関税を免除されているものであることに鑑み、学童給食用の輸入脱脂ミルクであることを知つて、これを学童給食用以外の用途に供するため譲渡することの認識あれば足り、右輸入脱脂ミルクが免税品であることの認識を必要としない…
事件番号: 昭和38(あ)783 / 裁判年月日: 昭和39年7月20日 / 結論: 棄却
輸入貨物について、当初より関税及び物品税を免れる目的をもつて虚偽の申告をして免税輸入の許可を受け、関税及び物品税を免れる罪は当該輸入貨物を保税地域より引取つたときに成立し、その後において用途外使用の申請をして関税及び物品税を納付しても一たん成立した罪が消滅することはない。