本件廻航が所論のごとく関税法二条一号にいわゆる引き取りの準備行為であつて、その着手とすることができず、従つて、原判決の同条号の解釈、適用が誤つているとしても、関税法一一一条二項によれば密輸入の予備をした者は密輸入の実行に着手してこれを遂げない者と同じく同条一項の例によるものであるから、右の違法は判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることに当るものといえない。
関税法第二条第一号および同第一一一号第一項の解釈、適用の誤が判決に影響を及ぼさないとした事例
関税法2条1号,関税法111条1項,関税法111条2項
判旨
関税法111条2項が密輸入の予備行為を本税の密輸入未遂罪と同等に罰すると規定している以上、密輸入の準備行為に留まる段階であっても、判決に影響を及ぼすべき法令違反は認められない。
問題の所在(論点)
密輸入の準備行為(予備段階)に留まる行為を、実行の着手(未遂)と評価して処罰することが、判決に影響を及ぼすべき法令違反に当たるか。
規範
密輸入の実行に着手してこれを遂げない者(未遂)のみならず、密輸入の予備をした者も、関税法111条2項により、同条1項(密輸入罪)の例により罰せられる。
重要事実
被告人がA港からB港へ船舶を廻航させた行為について、密輸入の「引き取り」の準備行為(実行の着手前の段階)に過ぎないのではないかが争点となった。弁護人は、これが実行の着手と認められない以上、有罪とした原判決には法令解釈の誤りがあると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(あ)1240 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
関税法第一一〇条第二項の定める刑は、その所定刑期又は罰金額の範囲内で未遂の事情を参酌して、未遂減軽の規定が存する場合と実質的に同一の刑を量定する余地が十分あるのであつて、このような法定刑の定め方を以て一般刑法に比し不合理として憲法第三一条に違反するということはできない。このことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇三…
あてはめ
仮にA港からB港への廻航が関税法上の「引き取り」の準備行為に過ぎず、実行の着手と認められないとしても、関税法111条2項は密輸入の予備行為を未遂罪と同様に罰することを規定している。したがって、実質的な処罰範囲が同一である以上、原判決の法令解釈に誤りがあったとしても、それが判決の結果を左右するような法令の違反(刑事訴訟法411条1号等)には当たらないと評価される。
結論
密輸入の予備行為は未遂罪と同様に罰せられるため、上告は棄却される。
実務上の射程
特別刑法において予備罪と未遂罪が同等に処罰される規定(関税法等)がある場合、実行の着手時期という理論的厳密性が、結論としての有罪・無罪や量刑の妥当性に影響を与えないことを示した。答案上は、可罰的な予備罪の存在が未遂犯成立の認定ミスを救済し得る論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)3683 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 破棄自判
旧関税法(昭和二五年法律第一一七号による改正前及び改正後のもの)第七六条第二項に規定する免許を受けない貨物の密輸出の予備罪を認定した場合には、その予備行為に供した船舶は同法(同前)第八三条第一項により没収すべきである。