旧関税法(昭和二五年法律第一一七号による改正前及び改正後のもの)第七六条第二項に規定する免許を受けない貨物の密輸出の予備罪を認定した場合には、その予備行為に供した船舶は同法(同前)第八三条第一項により没収すべきである。
貨物密輸出の予備行為に供した船舶と没収の要否
旧関税法(昭和25年法律117号による改正前及び改正後のもの)76条,旧関税法(昭和25年法律117号による改正前及び改正後のもの)83条,関税法の罰則等の特例等に関する勅令1条,関税法の罰則等の特例等に関する勅令9条1項,刑訴法411条
判旨
関税法上の密輸出予備罪が成立する場合、その予備行為の用に供された船舶についても、同法に基づく没収の対象となる。
問題の所在(論点)
関税法(昭和25年法律117号による改正時)において、密輸出予備罪(同法76条2項、1項)に該当する行為が行われた際、その予備行為に供された船舶が、同法83条1項に基づく没収の対象となるか。
規範
関税法83条1項(当時)に規定される「犯罪行為ノ用ニ供シタル船舶」には、本罪の実行行為(輸出入)のみならず、その予備行為に供された船舶も含まれる。同条の沿革および予備・未遂を処罰対象として明確化した法改正の趣旨に鑑みれば、予備行為に供した船舶を没収の対象から除外すべき理由はない。
重要事実
被告人は、他者と共謀の上、杉材および杉板を密輸出する目的で買い付け、集貨した。さらに、これらを積載・運搬するために、約50トンの船舶(A丸)を油津港に廻航させ、密輸出の予備行為を行った。
あてはめ
本件において、被告人は杉材等の密輸出を目的として集貨し、その実行準備のためにA丸を特定の港へ廻航させている。この廻航行為は密輸出の予備行為に該当する。A丸はまさにこの予備行為の用に供された船舶であり、被告人が占有していたものである。したがって、規範に照らせば、本件船舶は「犯罪行為ノ用ニ供シタル船舶」に該当すると評価される。
結論
密輸出の予備行為に供された船舶は、関税法83条1項により没収することができる。したがって、A丸を没収しなかった原判決は失当であり、破棄を免れない。
実務上の射程
行政刑法における没収規定の解釈において、処罰対象が予備・未遂にまで及んでいる場合、没収対象となる「犯罪行為の用に供した物」もまた、予備・未遂の段階のものを含むと解すべき一般的指針となる。
事件番号: 昭和30(あ)271 / 裁判年月日: 昭和33年3月4日 / 結論: 棄却
船舶により貨物密輸出の予備をなした場合において、その用に供した船舶を旧関税法第八三条によることなく刑法第一九条第一項第一号第二項により没収した違法があつても、右違法は未だ刑訴第四一一条第一号を適用すべきものとは認められない。
事件番号: 昭和29(あ)1237 / 裁判年月日: 昭和33年2月14日 / 結論: 棄却
所論A丸の没収につきその所有者が何人であるかの事実は、刑訴三三五条にいう罪となるべき事実に属しないから、これを認めた証拠を判決に挙示する必要はない。