判旨
第三者所有の物件を没収する場合、当該第三者が犯罪行為への供用をあらかじめ知っていた(知情)ことが必要であり、これを欠く没収は関税法および憲法29条の趣旨に反する。
問題の所在(論点)
第三者の所有に属する物件を没収するにあたり、所有者の「知情」が没収の必要要件となるか。また、その事実認定を欠いたまま没収を命じることの可否が問題となる。
規範
関税法83条1項(現行法上の没収規定も同様)の規定は、没収対象たる貨物又は船舶が犯人以外の第三者の所有に属する場合、所有者である第三者が、当該貨物について犯罪が行われること、又は船舶が犯罪の用に供されることをあらかじめ知っており、かつ犯罪時から引き続き当該物件を所有していた場合に限り、没収を許容するものと解すべきである。
重要事実
被告人は共犯者と共に、貨物を不法に密輸出した。この犯罪行為に供された船舶Aは、被告人ら以外の第三者の所有に属することが疑われる事案であったが、第一審および原審は、船舶の所有者が犯罪供用の事実をあらかじめ知っていたか否か(知情の有無)を明確に確定しないまま、船舶Aの没収を言い渡した。
あてはめ
本件船舶Aが第三者所有である可能性が高いにもかかわらず、判決文では所有者の知情の点について何ら明確にされていない。第三者所有物の没収には、所有者の主観的要件(予見可能性・知情)の確定が不可欠であり、これを確認せずに没収を命じることは、関税法の解釈を誤った違法、あるいは没収の前提要件たる事実を確定しない審理不尽の違法があるといえる。
結論
第三者所有物の没収には所有者の知情が必要である。これを確認せず没収を認めた原判決および第一審判決は破棄を免れない。
実務上の射程
憲法29条の財産権保障の観点から、付加刑である没収が適正手続(告知・弁解の機会)や実体的な正当性を欠いてはならないことを示す。答案上は、刑法19条等の没収規定の解釈において、第三者の権利を侵害しないための限定解釈の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1897 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 破棄差戻
一 所論は原審において主張判断を経ない事項であるから、上告適法の理由とならない。 二 (所論の要旨)原判決の支持する第一審判決によれば「関税法第八三条第一項により主文第二項記載の物件を没収する」と摘示しており、右物件中にはAが包含せられている。これによつてこれを見れば、右法条中犯人の占有に係るものとして、右船舶を没収し…
事件番号: 昭和29(あ)2757 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 棄却
犯人が旧関税法の密輸出行為の用に供した第三者所有の船舶については、所有者がその占有を犯人に移す際、それが密輸出の用に供せられることの事情につき善意であつたときは、旧関税法第八三条第一項により没収するをえないものである。